#39 変態の影
「変態を・・・見た?」
穏やかではない話だった。里琴もたまちゃんも深刻な顔をしている。
「もともと、この地域って出るらしくて。変態が」
「・・・」
「ときどき注意が回ってくるんです。子どもに声を掛けたり、裸でウロウロしてる人がいるって」
「そうなのか」
それなりに閑静な住宅街だと思っていたが、そんな輩が徘徊していたとは。わからないものである。
「それで、リコも見たことがあるんだ」
「見たっていうのは、最近か」
「今日」
「やだ!怖い」
たまちゃんは手で口を覆った。
「たまちゃんは気づかなかった?今日、学校から帰るときに、リコたちの後ろを歩いていた人」
「ウソ!そんな人、いた?」
里琴はこくりと頷いた。
「いたよ。で、リコが振り返ると壁の後ろだったり、電柱の影に隠れたりしてた」
「怖い・・・」
「そいつは何かやってきたのか」
「何も。ただ付いてきただけ」
「そうか、だから里琴ちゃん、途中から走り出したんだね」
「そう。変態が付いてこられないように、かけっこする振りして家まで帰ってきたんだ」
「偉い。しかし心配だな」
里琴の顔立ちが変態どもを惹き付けることは間違いないだろう。おまけに、過去にはテレビで活躍していたのだ。何かをするつもりがなくとも、後を付けてくる人間がいないとも限らない。
「大丈夫だよ。いざという時は防犯ブザーもあるし」
里琴は胸を張った。そしてニヤリと笑って付け加える。
「あと、男の人の弱点知ってるから」
「弱点?」
「キンタマ!蹴り上げてやるんだ!」
「やだリコちゃん!」
たまちゃんは下ネタワードに反応し、くすくすと笑った。
まったく、なんて日だ。オチンチンだのキンタマだの。まるで変態トークではないか。
2人はあっけらかんとしたものだが、俺の不安は晴れることはなかった。その変態が何を考えているのか、得体が知れず気味が悪い。せめて、変態の考えていることがわかれば、奴の次の一手も読めるというものだが――。




