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気がついたらJS4の保護者になってました。  作者: 軽羽春
たまちゃんと里琴
35/56

#35 夜道


「残念でしたね、ババ抜き」


 夜道を歩きながら、たまちゃんは俺を慰めてくれた。


「里琴ちゃんのお父さんが、ずっとババを引かないから、てっきりバレているんだと思っていました」

「いや・・・それまでは運が良かっただけだ」


 最後の最後で、俺は二分の一の確率に負けてババを引いてしまった。動揺するあまり、たまちゃんの目線を追えなかったのだ。


「ちょっと遅くなったけど、お家の人は心配してない?連絡しておかなくて良いの?」

「いいんです。ウチはお母さんが働いているので、この時間はまだ家に誰もいませんから。・・・里琴ちゃんと同じです」

「そう」


 雨は止んでいたが、俺はたまちゃんを家まで送っていくことにした。里琴も一緒に行くと主張していたが、パジャマを着ている子を連れていけないという理由にて、留守番を押し付けることに成功した。


「楽しかったなー、トランプ」


 たまちゃんは水たまりをひらりと避けて言った。


「里琴とは、昔から友達なの?」

「里琴ちゃんが転校してきてから、ずっとです」

「転校?」

「はい。去年の秋ぐらいだったかな」


 それは初耳だった。里琴はずっとこの街にいたものだと、なんとなく思い込んでいた。


「里琴ちゃんが最初に教室に現れたときは、びっくりしたなあ。すごい可愛い子が来た!って。だって、テレビにも出ていたから」

「知っていたのか」

「そりゃもう!ドラマの頃に比べると、だいぶ大きくなってたけど、すぐに分かりました」


 転入生はドラマに出ていた有名人だった。たまちゃんだけでなく、クラスメイト全員にとって衝撃的な展開だろう。まるで漫画や小説の世界だ。


「で、里琴ちゃんは席が隣になって・・・私に「たまちゃん」ってあだ名をつけてくれたのも、里琴ちゃんなんです」

「そうなんだ?名前がタマコちゃんとか?」


 たまちゃんは吹き出した。


「そんな昭和の名前じゃないですよ!私はタマコじゃなくて、千波って名前です」


 俺は戸惑った。「たまちゃん」と全く違う名前じゃないか。


「ちびまる子ちゃんの、たまちゃんに似てるからってことで、里琴ちゃんがつけてくれたんです」

「ああ、そういえば・・・」


 メガネをつけて、お下げ髪。たしかに「たまちゃん」である。控えめで、頭が良いところも似ているかもしれない。里琴は良いあだ名をつけた。


「まあ、里琴ちゃん以外は誰もそのあだ名で呼ばないんですけど」

「なんだ」

「でも、私はそのあだ名が気に入っていて・・・好きなんです」


 たまちゃんは顔をくしゃりと崩した笑顔を見せた。まだ歯の生え変わり途中なのか、犬歯のあたりの乳歯がまだ抜けたままだった。


「たまちゃんは里琴ちゃんのことが好きなんだな」

「はい・・・だから、心配で」

「心配?」


 たまちゃんは両手を組んで胸にあてるようにして、しばらく押し黙り、やがて決意したように話し始めた。

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