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気がついたらJS4の保護者になってました。  作者: 軽羽春
たまちゃんと里琴
32/56

#32 お風呂

「里琴ちゃん!」


 たまちゃんと呼ばれた少女は、里琴に会えて嬉しそうな笑顔を見せた。


「お友達・・・なのか」


 隠れていたはずの里琴が出てきてしまったことに、俺は大きく動揺していた。一体、どう行動するのが正解なのだろう。とりあえず、目の前のこの子の反応をみながら、慎重にいかなければ。今のところは、俺を里琴のお父さんと勘違いしているようだが。


「そんなところに突っ立ってないで、上がって!」

「ありがとう。・・・お父さん、お邪魔してもいいですか?」

「あ、ああ・・・」


 たまちゃんは俺にお辞儀をして、靴を揃えて家に上がった。ずいぶん礼儀正しい子のようだ。

 たまちゃんが歩くたびに、洋服からぽたぽたと水滴が落ちた。


「洋服、ビショビショじゃん!」

「雨に降られちゃって」

「風邪引いちゃうよ!・・・お父さん、バスタオル取って」

「お、おう」


 たまちゃんが「お父さん」と呼ぶのを、里琴は耳ざとく気づいたらしい。ここは父娘設定でいくしかない。俺はバスタオルを放って渡した。

 里琴はそのバスタオルをたまちゃんにすっぽりとかぶせ、頭を拭いてやっていた。身長は頭半分ほど里琴の方が高いようで、見ようによっては姉妹のように見える。キャラ的にもたまちゃんは妹キャラなのか、里琴に拭かれるがままになっていた。


 温かいものでも淹れてやるか。俺はそんな二人の様子を眺めながら台所に入った。すると、にわかに二人の会話の雲行きが怪しくなっていく。


「髪の毛だけじゃなくて、洋服もビショビショだよ」

「すごい雨だったから」

「これ一回脱がないと風邪を引くよ。脱いで!」

「え、でも」


 たまちゃんはこちらをチラリと見た。俺はドキリとした。それはそうだ。友達の父親とはいえ、知らない人の前で服を脱ぐなど、できるわけがない。

 ところが里琴は何を勘違いしたのか、嬉しそうな表情を浮かべ「いいこと思いついた!」と、手をぽんと叩いた。


「そうだ!ついでにお風呂に入ろうよ!」

「ええ?」

「いいでしょ?お父さん」


 里琴はこちらを見た。さすがに止めるタイミングだろう。俺はわざとらしく咳払いをした。こんなとき、父親ならどう言う?なるべく威厳のある言い方で。


「里琴、いい加減にしなさ」


 そこまで言ったときだった。浴室から聞き慣れた音楽が流れてきた。そして、女性の機械音声。


「オフロガワキマシタ」

「ちょうど沸いたみたいだね!」

「どうして・・・沸かした覚えはないが」

「ふふふ。さっき、お風呂のスイッチ、入れておいたんだ」


 風呂場に隠れていた時か。俺は天を仰いだ。すべてお膳立てが出来てしまっている。里琴はたまちゃんの手を引っ張った。


「入ろう入ろう!風邪引いちゃうから」

「う、うん。・・・あの、お邪魔してもいいですか・・・お風呂」


 たまちゃんは丁重に俺の許可を求めた。改めて見ると、たしかに洋服はぐしょぐしょに濡れていて、このままでは風邪を引いてしまうかもしれない。俺はなるべく厳粛な顔をつくって頷いた。


「・・・あまり長湯しないように」

「はい!ありがとうございます!」

「お父さん、覗いちゃダメだよ!」


 里琴はドアをバタンと閉めた。中から、二人の会話が聞こえてくる。何とはなしに、会話に耳をそばだてる。


「うちのお父さん、ヘンタイなんだ」

「ええ?ヘンタイ?」

「だから、覗きに来るかもしれないよ」

「ええっ・・・」

「ふふ。冗談だよ。ちょっとヘンタイなだけだから安心して」

「うん・・・」

「ね、お父さん?ちょっとだよね!?」


 里琴はドア越しに俺に問いかけた。ふん、勝手にしろ。俺は淹れかけのココアをそのままにして、仕事場に向かった。

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