表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気がついたらJS4の保護者になってました。  作者: 軽羽春
ショッピング
25/56

#25 夜①


 本日の夕餉はあさりと豆苗の中華風炒め、そして味噌汁だった。すべて里琴がこしらえたものだ。


 ただ待っているのも何なので、俺もアシスタントとして手伝うことにした。とはいえ、里琴の指示に従っていただけなのだが。

 この歳になって初めて「あさりの砂抜き」というものをした。なぜ塩を加えると砂が抜かれるのか、原理はよく分からないが、勉強になったことは確かだった。


 そして、里琴の料理の腕はなかなか見事なものだった。ちゃんと中華料理店の味になっている。それが里琴の言葉どおりに中華調味料のおかげなのか、あるいは里琴の謙遜なのかはよく分からないが。俺は後者であるとにらんでいる。


「豆苗さん、もう一度生えてきますように」


 水を満たした平たい皿に豆苗の根っこを入れて、里琴は手を合わせて拝んだ。


「できればもう2回、もう3回と生えてきて欲しいんだけどね」


 里琴に言わせると、2回目以降の発芽はひょろひょろとしていて、あまり食べごたえがないらしい。それはそうだろう。2回も3回も自家栽培されては、豆苗の生産者は死活問題だ。


 後片付けと皿洗いは俺が担当した。あさりの殻をジャラジャラとビニール袋にまとめながら、里琴に声を掛ける。


「明日から学校だろ?」

「うん」

「何時ぐらいに出発するんだ?」

「前の家では8時ぐらいに出てたかな。ここだと、学校が近いから、もう少し遅くてもいいかも」


 聞くと8時30分始業だという。とはいえ早めに出ておいた方が良いだろう。遅刻で保護者に連絡が必要となると、厄介だ。いや待て。遅刻に限らず、保護者面談や、保護者参加が必要な行事等があれば、俺はどうすればいいのだろう。スルーできるものなのだろうか。あとは忘れ物だ。授業中に届けることにでもなったら――。

 俺は不安になって里琴に尋ねる。


「そういえば、提出物とかはないよな?」

「宿題はなかったよ」

「宿題じゃなくて、学校に持っていかないといけないものとか」

「うーん・・・」

「なければいいんだ」


 俺は安心して皿洗いに戻ろうとした。それを止めたのは、里琴の短い叫び声だった。


「あっ!!」

「ど、どうした?」

「あった!持っていかないといけないもの、あった!」


 里琴はソファから跳ね起きて、ランドセルからプリントのようなものを取り出した。


「どうしよう・・・忘れてた」

「何を持っていくんだ」

「牛乳パック!」


 プリントを見ると「動くおもちゃ作り」なる図工の授業に必要なので、各家庭で牛乳パックを用意することと書かれていた。


「三本も・・・」

「どうしよう、間に合わない?」

「間に合わせるしかないだろう」


 冷蔵庫を開けると、今日買った未開封の紙パックが2本、そして開封済が1本あった。開封済のものも、まだ中身は半分以上残っていそうだった。


「これを・・・」

「2人で・・・」

「・・・飲むしかない」


 俺と里琴は顔を合わせ、悲壮な覚悟で声を合わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ