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桃色気分。

作者: Maria

「ときめき…ズキュン?」







正直な話ドキドキ胸きゅん、誰かに胸をときめかせるなんて…




せいぜい青春真っ盛りの高校生くらいまでだよ。

なんてきのうまでの私、もうすぐ22才の英玲菜(えれな)は思っていました。







ですが人生なんてほんの一瞬のスパイスで、一瞬にして色づくもの。




まるで桃色。




気分は桃色。







「もうまさに胸キュン!超ど真ん中!ときめいちゃったの!!」




テーブルの上のピーチティーがちゃぷっとはねて、お気に入りだったハンカチにしみがついてしまった。

だけど良かった。

その下のお気に入りのワンピースに紅茶のしみがつかなくって。






とにかく私は興奮していた。

いや、それとも桃色気分の私だから、ピーチティーまでもがときめいてしまったのかな?なんて。







親友の華は紙ナプキンをささっと取り出してテーブルの上に広げている。

華は若いのにママみたい。




「あの〜英玲菜さんは大好きで仕方ない彼氏が居ませんでしたっけー?」




きっとあきれてる。

華はけっこう冷静沈着っこ。






私はまだ少し温かいピーチティーをごくりと飲みこんだ。






「それとこれとは別!あ!でも春一(はっち)には絶対内緒にしてね!乙女同士の秘密ってことで。」






私には大好きで仕方ない、素敵な彼氏が居るけれど、もちろん毎日彼にはドキドキときめいたりしているけれど。




正直なところ最近は、彼以外の男の人にズキュン!なんて。

胸のときめきなんて感じることなどなかったのだ。






女はいつまでも恋をして、胸をときめかせていた方がいいなんてよくいうけれど、私はいつまでも彼に恋をして、彼だけに胸をときめかせていられれば最高じゃないなんて思ってたりしてる。






いいや、していた。かな?






だけど感じてしまったのだ。

彼以外の男の人にときめきを─

ドキドキ、ズッキュン!の胸キュンを。




だから、つまりは…






「つまり、青春真っ盛りな気分になったってことね!」






華は拭き終わった紙を端にキレイによせた。

几帳面。






「まさにそうっ!もう気分は桃色!桃色気分〜♪」






私はあきらかに浮かれていた。

だって仕方ない。

だって胸がときめいてしまったんだもの。

ごめんね、はっち。






「だけどさ〜ぁ?それってただの営業トークだって!そのお兄さんは、英玲菜にだけ優しかったんじゃなくてお客さんみんなにきっと優しいよ?きっとってゆーか絶対!」






私は真っ直ぐに華の瞳を見つめていた。






「そんなの分かってる!だけど…だけどね。あのお兄さんは、ちゃんと私のこと女の子扱いしてくれたの!!それに年上の包容力ってゆ〜か、なんてゆ〜か同い年のはっちにはない大人の魅力ってゆーの!?もお思い出しただけでニヤける〜♪」







華は笑っていた。

私だって笑っちゃう。

まぁきっと二人の笑いは全く別のものなのだろうけど。







別にどうこうってわけじゃないの。

だってきっとあのお兄さんだって実際付き合ってみたら、大人とはかけ離れるほど子供じみた人かもしれないし。

優しそうに見えるだけで本当は俺様タイプかも。




だから決してどうこうっていうんじゃないの。

それは確か。

私だってバカじゃないもん。






「君は変なところ冷静だね(笑)!まぁでも分かるよ。ほっとかれるとついつい女ってね!」






冷静沈着っこ華ちゃんにはなまるマークもらっちゃいました。







恋愛は、惚れたものの方が負けなんていうけど…絶対その通り!

私と彼は周りから見れば幸せそうなラブラブな二人だけど、実際はちょっとちがう。

きっと二人気付かぬうちに何かが少しずつ、本当にちょっとずつなんだけどズレてきてるの。






そのことに最初に気がついてしまったのは私の方だったの。

私の方が彼よりも彼を大好きになっていたんだ。

悔しいけど、私の負けだ。

だってこんなに惚れてるの。






だからかな。

恋人としての優先順位が私よりも低い彼に、きっと私は嫉妬してる。

恥ずかしいけど妬いてるんだろうな。







「私はね、ただ同じくらい愛してほしいだけなんだ。いつでも女の子扱いしていてほしいの。それってワガママなのかな…」






くるくる、くるくるとピーチティーの中で金色のスプーンが回っている。

華は優しくスプーンを回す私の手の上に手を置いた。






…神経質。







「ん〜、付き合って時間が長くなるとやっぱりどうしても男の人ってさ、安心しちゃうってゆーかさ。まぁ、なんてゆーか…つらいよね。いつまでも女の子扱いしててほしいって思うことは全然悪いことじゃないと思うよ!!」






優しい。

思いやりたっぷりな大親友、華!







ときめき、ズッキュン!

ちょっとしゅんとしおれかけていた私に、お水をちょっぴりかけてくれたあのお兄さん。

だけどちゃんと分かってるのよ。

私にとっての太陽は、彼氏(はっち)だってね☆






だけど太陽を見つめてばかりいてはお花は枯れてしまうから─

ちょっぴりイケない娘に今日だけは変〜身!なんてね。






「乙女の秘密ってことで今日は語っちゃいますか!英玲菜ちゃん♪」






ごめんね、はっち。

でも…今日だけは許してね!




「うん♪語る〜!あのねあのねそのお兄さんがねっ…」







女の子には甘〜いスイーツが必要なように。




だから…






たまにはイイよね♪







ドキドキ、ズッキュン!

胸キュンで。






気分は桃色。







桃色気分♪

私、ときめいちゃいました!

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