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間話 ~矢仲ゆり~

2019/07/12 具体的エピソードを加筆


※学歴に対する偏見が描かれていますが、あくまでフィクションであり、学歴を差別するものではありません。

 ――知ってる? 二組の矢仲さん、S女(ウチ)の系列のN女子短大の推薦受けたらしいよ。

 ――マジ? あの子T大狙いじゃないの? そーいえば、春の校内模試も順位激下がりだったね~

 ――それがね、親が離婚して、燃え尽きちゃったらしい。

 ――何それ、いい歳して悲劇のヒロイン気取り? ウケる。

 ――ガリ勉が勉強捨ててどうすんだっつう話よ。

 ――S女(ウチ)に来た意味ないじゃん。カワイソー



 高二の終わりに、両親が離婚した。

 もともとあまり家に居着かなかった父は、お祖母ちゃんが亡くなってから殆ど家で見ることはなくなった。母は父の影が家庭から遠のけば遠のくほど、私への当たりがきつくなった。勉強しろ、見返してやれ、が口癖で。


  中等部へ入ってすぐの頃だったかな。化粧が禁止のうちの学校で、色付きのリップクリームが流行ったことがあった。今にして思えば、本当に子供らしい、可愛い流行だったと思う。目標だった(正確には()()目標だけど)中高一貫校に入学して、これからは今までみたいに勉強勉強とうるさく言われずに済むだろうと、羽根を伸ばしたい気持ちもあったんだ。

 私の通学鞄からピンクのリップが出てきた時、私は生まれて初めて母に殴られた。こんなもの付けて色気付いて、男を誘うつもりか。そんな淫乱に育てた覚えはないって。

 その時私は理解した。母は女を憎んでる。でもそれ以上に、男を憎んでるって。


 それからの私は、ただひたすら地味に、目立たないように、母の言い付け通り勉強ばかりしながら過ごした。

 私だって本当は、友達と寄り道したり、おしゃれしたり、恋だってしたかったんだけどな。


 そんな救いのない我が家だったけど、幼い私は全てを諦めきれていなかった。

 私が頑張って、もっともっと頑張って、母の機嫌が良くなれば。父の誇れる娘になれば、あるいは――。それが、私が勉強を投げ出さずにいた大きな理由だった。


 でも、そうやってがむしゃらに走ってきたけど、その努力は両親の愛を繋ぎ止める手段にはなり得なかった。



 ――大学卒業までのお金は出すよ。


 父は別れ際にそう言った。でも私はなるべく早く独立して全てを絶ち切りたかった。全てのしがらみを取り払って、自分の本当にやりたいことをしようと決めた。

 実は、中学の頃からお祖母ちゃんの薦めで小さな子と一緒に遊ぶボランティアをしていたの。純粋で、一途に慕ってくれる子供達の笑顔に、私はずっと癒されてた。



 私は愛に期待しない。

 だけど私は、愛することを諦めない。

 私の両手は小さいけれど、この腕に収まる分の愛だけ、大切に愛して、育もう。

 

  ――それがいつか、失われてしまうものだとしても。



 私は愛に期待しない。

 だけど、私は誰かを、愛したい。


主人公が愛を与えることに一途なのに対し、受け取ることに鈍感・臆病なのは理由があります、という話でした。

明日はようやく新キャラが登場します。


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