今度は二人で花を観たい
アルティア王国が魔女の国と呼ばれていたのは今は昔
災厄の魔女と呼ばれる一人の魔女が街ごと人々を焼き殺した事を皮切りに魔女狩りが始まった。
悪しき魔女も無実の魔女も彼らには判別出来ず、魔女と名の付くものは全て殺された
火炙り、ギロチン、拷問、刺殺、あまりにも酷い仕打ちに魔女達も黙ってはいられなかった
一部の魔女は報復として人々を殺し、その報復に魔女狩りが過激化していく
そんなアルティア王国の王都
花の広場と呼ばれる場所でまた一人の魔女が殺されようとしていた
◆◆◆
魔女狩りの騎士達が魔女を取り囲み剣を向ける
「ふふふ、抵抗なんてしないわよ?」
そう言って、両手を挙げる魔女に一人の騎士が前に出る
「お前達、俺が取り押さえる。お前達は仲間がいないか見張っていろ」
「「「はっ!」」」
魔女に近づいていく一人の騎士
彼は魔女狩りの騎士達の隊長、ジル・クライス
魔女の天敵、対魔女のスペシャリストなどと呼ばれ
魔女狩りの騎士達の隊長に最も相応しいとされる男だ
ジルは降参の格好をした魔女に近づいていく
「ふふふ、ジルったら、私に友達がいないことなんて知っているでしょう?」
そう言って魔女はジルに笑顔を向ける
「知っているよ、サラ。君は人付き合いが苦手だからね」
そう言って、ジルはサラの手に手枷を嵌めた
「ふふふ、酷い人ね?恋人に手枷を嵌めるなんて」
責めるような口調とは裏腹に、変わらず笑顔で話しかけるサラ
「ああ、俺は酷い奴なんだ。恋人に手枷を嵌めて殺してしまう様なね」
戯けた口調とは裏腹に、苦しげな顔で受け答えるジル
「仕事と私どちらが好きなの?」
「もちろん君さ」
対照的な顔で二人は話す
「仕事と私どちらが大事なの?」
「もちろん仕事だ」
分かりきった事を確認するように二人は話す
「酷い人ね?」
「酷い奴なんだ」
「それでも好きよ?」
「俺もさ」
二人は花の広場を歩く
恋人同士の逢引のように
「綺麗な花ね?」
「君の方が綺麗さ」
花咲く道を二人で歩く
「ふふふ、ジルったら」
そんな二人の行き着く先は
「ねえ、サラ」
「何?ジル」
「君は、俺が一緒に逃げようといったらどうする?」
「どうしようかしら?」
大きな大きな処刑台
「君を殺したくないよ」
「でも私は貴方だったら殺されてもいいわ」
民衆達が見守るその中で
「でも、あまり痛くしないでね?」
「もちろん、痛くないようにする」
恋人は恋人を殺した
今度は二人っきりで花を観たい