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ようこそこの世界へ!

「お嬢様、お嬢様!」


揺さぶられる感覚に目を開ける。背中に固い感触、見ると床に寝転んでいたようだ。真上にはこんなときでも表情を変えないエマの顔。


「エマ……」


エマはルイーザの背を支えて起こす。見渡してみると、周囲は一面白い壁だった。


「見事なまでに真っ白ね」

「真っ白です」

「見覚えある?」

「あったらよかったですね」


エマはやれやれと首を振った。十中八九、先程のなぞの光が原因だろうが、原因がわかるだけで帰れたら苦労はしない。


ルイーザは立ち上がった。立ち上がり、白い壁を調べてみるが、固い感触があるだけで扉などは全くなかった。


「出入り口が見当たらないわ」

「私もお嬢様が起きる前に調べてみたんですが、出入り口どころか隙間さえ見当たりませんでした。窒息が心配です」

「怖いこと言わないでよ!」

「叫ぶと酸素を消費しますよ」

「誰のせいと思っているの!?」 


ルイーザはその場に座り込む。白でかこまれた空間。エマの黒色の髪が、その部屋の唯一の救いだった。


「逃げ出したいとは言ったけど……閉じ込められたいとは言ってないわよ……」

「部屋に二人で窒息死ですか。見ようによっては心中ですよ

ね」

「だから怖いこと言わないで!ていうか主人が凹んでるんだから慰めなさいよ!」

「ナグサメル……?それ美味しいんですか?」

「バカにしてるわね!」


……エマは相変わらずエマだ。

その事に少し安心する。


ルイーザがエマの方へにじり寄り、その側にちょこんと座ると、エマは怪訝そうな顔をした。


「どうしたんですかお嬢様。トイレいきたいんですか」

「何でそうなるのよ!不安がってるって思いなさい!」

「でもトイレは結構重要問題ですし……」

「だから!心配するところが違うのよ!!」



エマをポカポカと叩く。「痛いです」と言っているが、エマに応えた様子はない。


「そんなに激しく動いたら酸素消費が激しくなりますよ」

「懲りてない!」


もう一度エマにデコピンをお見舞いしようと右手を構える。いや、構えようとした。



『大丈夫だよ。ここは窒息することも飢え死にすることもない。ただの待機場所だからねー』



右手は中途半端な格好のまま固まった。それを見逃すはずのないのんきなエマが、「お嬢様その手なんですか?カマキリの真似ですか?」と言っている。


「いや、それどころじゃないでしょうよ!」

「お嬢様をからか……んんっ、お嬢様の言動や行動をたしなめるのもメイドの務めですので」

「からかうって言ったわよね!今からかうって言ったわよね!?」


ルイーザがエマに食って掛かる。存在を忘れられそうになっている天の声(仮)が、居心地悪そうに咳払いをした。

その音に、ルイーザとエマはハッと上を見上げる。



『そーそー、とりあえずはおとなしく聞いてもらえると嬉しいかな?』



年若い男性の声だ。ルイーザとエマは顔を見合わせ、短く話し合う。


「どうします?」

「聞いた方がいいんじゃない?」

「そうしますか」


と言う相談の末、話を聞く態勢になった。


『どーもどーもありがと。じゃあ説明するね。……んー、でもボクが1から説明は面倒くさいなぁ。そうだ、何を聞きたい?』


天の声(仮)はフランクに話しかけてくる。

ルイーザは(何かしらコイツ……)と思いつつ、エマを見た。

エマは「なんですかコイツ……」と言いつつ、天井を見上げていた。


心が通じあっているようで何よりだ。


エマは少し考える様子を見せ、天の声に話しかけた。


「では、ここはどこですか?」

『いい質問だね!といっても、さっき言ったはずだよ。ここは待機場所。説明の場所だね』

「待機ってことは、これからどこかへ行くんですか」

『これまたいい質問だ!そうだね、君たちの行くのは元とは違う世界だよ。でもなー、これもうちょっと溜めてから言いたいんだよねー』


……ムカつくわね。

ルイーザは言い様のないいらだたしさを天の声に覚えていた。エマも同じはずだ。



「じゃ、なんで私たちをここに呼びやがったんです?」



口調が荒くなっている。



『そんな怒んないでよー、怖いじゃん。君たちが呼ばれたのはー、そうだね、資質があるからかな?まあそれは後でわかると思うけどね』

「どうしたら帰れます?」

『えぇー、帰りたいの?さっき逃げ出したいって言ってたじゃん。だから連れてきたのにー』


エマはそこでルイーザを見た。ルイーザはまさかそこで自分が出てくるとは思わず、びっくりして目を見開く。


「なんで知ってるのよ!?」

『知らなかったら連れてこないよ。まぁー、ボクが帰そうと思えば……んんん……?まあボクも全知全能ではないから、できる限りかなー』



後半はもはや独り言だった。

ルイーザが助けを求めるようにエマを見る。エマは珍しくその顔に表情を浮かべた。

憎々しげに白い天井を睨み付ける。



「御託は良いからさっさと要求を言え」



ドスの効いた声だった。ルイーザはエマの声に少し驚く。

(エマ、こんな声も出来たのね)


『だから怖いってー、もー、せっかちだなぁ』

「早く言え」

『はいはい分かりましたよ。君たちの行く世界はねー




ヤンデレないと何もできない世界です!』






「……は?」

「……は?」


主従は全く同じ反応をした。即ち、全く理解できないですと言う反応だ。


「え、やんでれって何」

「何でしょうか。やん……でれ?」


首を捻るが、そんな単語は聞き覚えがない。


『分からないのも無理はないから、親切なボクがやることリストを用意しておいたよ。大体このリストの通りにしてればこの世界で生活できる……と言うより、生活できる手助けをしてあげる』


そう言うが早いか、何もないはずの天井から一冊の薄い本が落ちてきた。ルイーザより少し背の高いエマが初めにそれをつかみ、「やることリスト……?」と言った。

信じられないくらい滑らかな紙だ。



『あと、聞きたいことがあったら、それに話しかけてね!丸いボタンを押したら即話しかけられる親切設計だから!楽々フォンもびっくりだよねー』



「わ!」

今度は固い何かが落ちてくる。見たことのない箱だ。しかし箱にしては薄く、何かの機械のように見える。

ルイーザが拾い上げると、「ピロン」と音が鳴った。


「なにこれ……エマ、わかる?」


やることリストなるものを見ていたエマが顔をあげる。ルイーザの持っている謎の機械を見ると、「なんですかそれ」と近寄ってきた。


「初めて見ました」

「私もよ。丸いボタンを押せば……って言ってたけど、これのことよね」


二人してそれを覗き込む。

謎の機械の表面には、お手本のようなきれいな文字が並んでいた。






─────ようこそ、ヤンデレないと何もできない世界へ!七組目のあなたたちを歓迎しましょう!





まばゆい光が機械から発される。

エマが咄嗟にルイーザを庇うが、効果のないことは確かだった。

ルイーザ 18才

エマ   19才

ちなみに言うまでもないかと思いますが謎の機械は携帯です

ルイーザたちは中世ヨーロッパに似たどこかから来ています



以下裏設定


ルイーザ……「名声のある軍人」

クライン……「小さい」

ルイーザの先祖は元々小さな地主でしたが、とある戦で活躍して新たな領地を授けられクライン家になりました。

背が低かったみたいですね。ルイーザもそんなに背は高くありません。


エマ……「万能」

大体なんでもこなせますがカエルだけはにがてです。クライン家に代々仕えている家系です。

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