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勇者アイドル百合ハーレム ~アイドルな勇者が百合ハーレム率いて魔王討伐~  作者: 浦和マサツナ
第2章 百合ハーレム 〜ヴァルキュリウルス・セラグライオ〜
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第36話 アイドル集団がやって来る! やぁやぁやぁ!

 流行に敏感な王都の人々の間で持ち切りの最新の話題。それは『パフォーマンスを純粋に行う踊り子』……アイドルと呼ばれる女の子達で結成された集団『ヴァルキュリウルス・セラグライオ』の誕生に関する数々の逸話であった。


 王都最大の踊り子商会タンシャージャを筆頭に、王国、公国、及び、王国連合各国の大手踊り子商会達が出資をしている。今や伝説と化したマティルド姫御前公演でタンシャージャが魅せた新たなる舞台演出に価値を見出した各商会達が、その商機にあやかろうとしているのだ。


 そこまではまだ時々ある話……で済むのだが、一番大きな、爆弾的とも言える話題はまずその座長について。


 なんと、マティルド姫……マティルド・スヴェンセンが務めるのである。


 隣国スヴェンセン公国王位継承順位5位の立場を捨て、大好きな演劇の道を行く事を決めたのだ。幼いながらも容姿端麗でかつ、剣術の達人でもあるマティルド姫が率いるアイドル集団!


 ヴァルキュリウルスとは異世界から召喚された勇者様の世界の言葉で、戦を司る女神達を表すという。マティルド姫が率いる「戦乙女達の後宮」の名に実に相応しいといえよう。


 美麗で可憐な姫が率いる、歌姫集団……一般市民達は、その綺羅びやかさに目を奪われ、中にはこの少女達の秘密の花園を妄想して楽しむ者達も出ていると言う。


 この事に、姫が側室入りをした王国の第二王子イェルクはというと、大いに賛同し、彼自身もまた、その王位継承権を捨て、姫を全面的に支援している……とされている。


 この愛ある行動に、王国及び公国の一般市民達は大いに喜んだが……イェルク第二王子は、実際には魔族化したため幽閉の身となっていた。その事実は当然公表は不可能。両国のメンツを保つため、そういう筋書きになったのである。



 そして話題はまだ尽きない。


 副座長を務めるのはユーリ・フィジーム。無名の新人ながらマティルド姫御前公演で名演技を披露し、姫から直々に副座長へと抜擢された超大型新人である!!



 ……つまり私こと、富士見ゆりかなのだが。


 ゆりかを少し捩ってユーリ。 富士見をぐわっと捻ってフィジーム、という訳。私の見た目はここ周辺の国じゃない事は一目で分かるので、少し遠い国風の名字にしたのだ。


 富士見ゆりかという存在はすでに勇者として認識されてしまっているので、今更本名は公言出来ない。


 では「勇者・富士見ゆりか」はどうするかというと、影武者を使い王国連合軍の御旗となってもらう体裁を取る。今後はそれを私達が兵士たちの慰安ライブという形式でバッグアップし、まるで「勇者・富士見ゆりか」が本当に活躍しているかのように見せつけるのである。


 何度かライブを重ね、実績を作ったあと、王国連合軍が私達を前線兵士達の慰安ライブを要請する……という台本がすでに用意されている。



 初公演を来週に控え、練習漬けの日々を送っていた私は、ウルシュラちゃん……踊り子名はシュラちゃんだ……と一緒に、スイーツ分を摂取するべく、踊り子商会タンシャージャの近くにあるカフェへとやって来た。見知ったソルヤちゃんも丁度休憩時間に入いったようだ。私達は一緒に席へと着いた。


 彼女はここの名物店員さんだ。踊り子ファンとしても有名なソルヤちゃんは、私、というか、ユーリのファン第一号なのである。


「ほんっ……とうに! すごかったよ! あの公演は!!」


 姫御前公演を行ったのは既に数週間前の話なのだが、今でも興奮は冷めていなかったようである。彼女を含むカフェの店員さん達には、タンシャージャの総支配人であるヴァルト氏にチケットを配ってもらっていたのだ。


 ファンの期待に応えられて本当に良かった! まぁあの時は名演技っていうか、死ぬ間際だったので本当に必死だったのだけれど。



「そして今度は『ヴァルキュリウルス・セラグライオ』の副座長に大抜擢! 私の目に狂いは無かった!!」


 クワッ!と目を見開いて、両手を左右に広げながら彼女は叫んだ。 大げさだなぁ。


 初めてあった時は店員さんとお客の関係だったのでもっと硬い口調だったのだが、今では友人だ。仕事中はさすがに今まで通り丁寧に喋るが、休憩時間になると素の状態となる。


 いつものように店の外のテーブルを選んで座っている。周辺には私服で身を固めた元王国騎士団所属、現在ヴァルキュリウルス・セラグライオ所属の元騎士達が私達のボディガードを務めているで安心して外でお茶が出来るのだ。


 中には見知った顔も多くいて、エディ氏もそのうちの一人。ネストリ王国騎士団団長もこちらへ来たがっていたが、さすがに無理である。彼には私の影武者ちゃんをしっかり守ってもらわねば。


影武者ちゃんは今の所まだ選定中だけれど、一般的な意味とは異なり、私とは見た目の方向性を変えるらしい。選定はマティルド姫とマリーイ様が行うと聞いている。あの二人なら、良い影武者ちゃんを選んでくれそうだ。


 ネストリ団長とは逆に、王国を代表する首席魔導士ユスティーナさんは、新たなる魔導器具の開発を共同で行うという名目を引っ提げ、王宮から出向という形で私達と行動を共にする事となった。


 同じく出向組となったのはタンシャージャのナンバー2であるシニッカさん。ユスティーナさんとシニッカさんが共同で新たなる魔導器具を開発をした功績をマティルド姫が認め、スカウトした……となっている。



「ユーリとマティルド姫と一緒に歌って踊るのかぁ。あぁ……早く観たいなぁ。ねぇねぇ、マティルド姫ってどんな方なの?」


 アイドルに夢見る少女の目で、ソルヤちゃんは喋る。


「素直で可愛い素敵な女の子だよ。歌も踊りも演劇も、本当に上手でね。座長に選ばれたのは実力なんだって、次の公演で分かると思う」


 私はパフェを頬張りながら答えた。


「そうなんだ……ねぇ、ユーリ」


 語りたい秘密でもあるようだ。 声を潜め、他の店員さんたちに聞こえないように私の耳元で囁くソルヤちゃん。 パフェのような甘い吐息が私の耳をくすぐった。


「なぁに、ソルヤちゃん?」


 私もわざと、彼女の耳元に唇を近づけて囁き返す。 一瞬で顔が赤くなるソルヤちゃん。可愛い。この娘の踊り子を見る目はヴァルト氏が認める様に、本当に鋭い。 その内、この娘も(ヴァルキュリウルス)(セラグライオ)に欲しいなぁ。


「私、いま小説書いてるの」


「へぇ! 私読むの好きなんだ! 今度読ませてよ!」


以前から出演するドラマや映画の原作はしっかり読み込む派だったのだ。


「まだ書き出した所だから、そのうちにね!」


 おや、普通は恥ずかしがるところだが……結構書きなれているっぽいな。脚本家としての才能もありそうじゃない。ますます欲しくなってきた!


「内容はヴァルキュリウルス・セラグライオみたいな、少女たちだけの集団が冒険に出るっていう物語なんだけれどね」


 そこでなぜかもじもじっとするソルヤちゃん。さらに小声になった。


「あの……マティルド姫が女の子大好きって噂、本当?」


 なんでそんな事を知っているの!?


「あー、えー、うーん、そうだなぁー『可愛い娘は好きよ』と意味深に微笑んではいたなぁ」


 あっははー! とごまかす私。そういう秘密中の秘密っぽい真実は一体どこから噂として漏れる物なんだろうか。案外、本人がウチらの人材確保の為に故意に流しているのかもしれないけれど。


「お、女の子同士の恋愛って、その、変じゃない……かな?」


 恐る恐る、ちらりちらりと私をみるソルヤちゃん。それは否定して欲しくない、という表情と口調だった。


 なるほど……つまり冒険物語の皮をかぶった百合小説を描きたいと? 非常に良いですね!! ますますソルヤちゃんをスカウトしたくなってきましたね!!


「私は良いと思うなぁ、小説の中の女の子同士の恋愛って。 綺麗で無垢そうな感じがあってさ」


 あくまでも、物語の中では、というニュアンスは崩さない。この世界で同性愛はどう見られているのか分からないからだ。


「ほ、本当にそう思う?」


 しかし肯定された事に、嬉しがりながらも驚きを隠せない風のソルヤちゃん。その表情をみるに、やはり基本的にはタブーなのだろう。


 しっかしなぁ、マティルド姫と良い、その配下のメイドと良い、マリーイ様といい……そんなにタブーには思えない気もする。それともあの国がオカシイだけなのか。 大公もアレだしなぁ。


「言ったでしょ。 小説読むのは好きだって」


 ウインクでごまかす私。


「そっかー。……うん! ありがとう! 完成したら絶対に読んでもらうからね!」


 フンス!と息巻くソルヤちゃん。


 もちろん良いですとも! もし完成度が高かったらシニッカさんにも見せて、スカウト持ちかけなきゃ。


 そこで、シュラちゃんが私の袖をくいっと引っ張った。横で大盛りパフェを黙々と食べてたウルシュラちゃん……否、シュラちゃんを見る。


「ユーリ……お姉ちゃん。そろそろ練習の時間だよ」


「あ、本当だ! ごめんねソルヤちゃん! 私達帰るね!」


「うん! また来てね!」


 会計をして、店を飛び出す私達。向かう先は王都内の、王宮を挟んでタンシャージャとは真逆の方向にある建物……私達ヴァルキュリウルス・セラグライオの事務所兼スタジオ兼寮である。


 王宮内にある元帥府……否、勇者府は影武者ちゃんチームに任せ、私達は王都内の潰れた踊り子商会の建物を借りたのである。


 ユスティーナさん達が制作した魔導器具から流れる軽快な音楽が微かに漏れ出しているスタジオに飛び込むと、柔軟体操をすでに開始していたマティルド姫がプンスカしていた。


「二人共! 遅い!」


「ごめんごめん!」


 謝りながら姫制作のジャージ……胸元からは王国連合軍マークが無くなり、代わって(ヴァルキュリウルス)(セラグライオ)ロゴが編み込まれたワッペンがついている……に着替えながら、音楽に合わせて柔軟を開始した。


 来週に私、マティルド姫、ウルシュラちゃんの三人で初公演としてショートライブを行うのである。


 さぁ、私の長年の夢……マティルド姫……つまり真弓ちゃんと同じ舞台で歌うという夢が……ようやく叶う時が来た!

4/18に第一話の前半を大きめに改稿しました。


話の大筋には影響がありませんが、 ゆりかや真弓のかつてのアイドル生活を足しました。


よろしければ読み直してみてください。

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