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勇者アイドル百合ハーレム ~アイドルな勇者が百合ハーレム率いて魔王討伐~  作者: 浦和マサツナ
第2章 百合ハーレム 〜ヴァルキュリウルス・セラグライオ〜
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第34話 あなたが作る気持ちの良い場所

 「マリーイ様……」


 私は、マティルド姫の言っていた『気をつけて』の意味を幾つか勘違いしていたようだ。


 「なぜ日本語を?」


 この場には私とマリーイ様しかいないのに、言葉が通じている。この現象は公演の後でマティルド姫が私だけと面談した時にも遭遇している。


 つまり、マリーイ様は日本語が喋れる。


 マティルド姫ほどではないが、流暢で自然な発音は、翻訳飴を通して聞こえる日本語ではない。


 「あら、あの娘から聞いてなかったかしら? 私も彼女から日本語を習っているのよ?」


 ……え、そりゃまたなぜ?


 「あの娘が転生者である事は分かっていましたからね。 折角なら異世界の文化も知りたいし、異世界の言葉を覚えれば暗号に使えるかもってね」


 昔の戦争で、とある国が少数民族の言葉を暗号にしたようなものかな。


 「とは言え,現状使えるのはゆりかちゃんとマティルド以外だと……私でしょ、夫でしょ、あとあの娘の諜報部隊の方たちね」


 これで心配はなくなった? と、おどけるマリーイ様。 なんというか、可愛い女性である。


 「でもずっとあなたと日本語を使う訳にもいかないから、ね? 私とも翻訳飴を交換してくれると、嬉しいのだけれど」


 両手をぽんとあわせて、そうしてくれると本当に嬉しいとばかりに笑顔で言う。


 ……私はどうやら、三重の意味で、マティルド姫の言う『気をつけてね』を勘違いしていたらしい。


 マリーイ様も女の子が好きな人じゃねーか!!


 私やマティルド姫が美少女を目の前にした時に出す雰囲気とそっくりだ!


 マティルド姫……いや、真弓ちゃん時代はあそこまで女の子大好き! という訳じゃなかったはず。 上手く隠していただけかもしれないけれど、それなら今でも隠し通すと思う。という事は、マティルド姫の女の子大好き遺伝子の大本はマリーイ様かー!!!


 「私とじゃ……いや?」


 悲しそうに瞳を伏せるマリーイ様。


 いいえ、そんな事はございません! 美少女大好きな私ですが! 人妻も興奮しますですよ! しかも友人のお母様ですよ!?! 興奮しないのか?


 いや、する。


 私は黙ってマリーイ様の横に、ちょこんと座った。わざと少し距離を空ける。案の定、マリーイ様が私にぴとっとくっつくようにスライドしてきて、私の腰に手を回してきた。


 「うふふっ、いい香りね」


 私の頭に顔を埋め、嬉しそうに呟くマリーイ様。


 「マリーイ様も……その……失礼かもしれませんが、お母さんみたいです……」


 私はふと、日本に残した母を思い出した。 見た目も雰囲気も匂いそして歳も全て違うというのに。


 「……本当に、ごめんなさいね、ゆりかちゃん」


 私の頭を優しく撫でながら、なぜか謝るマリーイ様。


 「私達の勝手で、あなたをここまで召喚して……まだ家族が傍にいて欲しい年頃でしょうに……本当に……ごめんなさいね」


 ずっと、この異世界での生活を楽しんでいるつもりだったけれど、 どうやら今になって、私は家が恋しいという事に気がついてしまったようだ。


 一旦そう思ってしまうと、涙が勝手に溢れ出してしまう。


 「うぇえ……ひっく……お母さん……お母さんっ……会いたいよう……!!」


 みっともなく、マリーイ様にしがみついて泣きじゃくる私を、彼女は優しく抱擁し、撫で続けてくれた。



 いつの間にか、眠ってしまっていたようだ。 目がじくじくする。きっと赤く腫れているんだろうな。


 頭を回すと、女性のベビードールから透けてみえる縦長のセクシーなおへそがちらりと見えた。


 「あら、ゆりかちゃん、起きた?」


 頭上から、マリーイ様が心配そうで、かつ、安心したような顔で覗き込んできた。


 「……ありがとうございます。 なんかスッキリしました」


 えへへっと、さっきまでの緊張が嘘のようだ。家族と会話する時の私のように、素直に笑えた気がする。


 「良かったわ。……やっぱりあの娘とそっくりね……もしかして以前も知り合いだったりするの?」


 おっと、やはり公妃様であったか。 油断ならぬ。 一応マティルド姫との打ち合わせ通り、知らぬ存じぬを貫こう。


 「……同じ国で、近い時期の時代の出身です。 私もマティルド姫もお互いアイドルでしたから、テレビでお互いを見た記憶はありますよ?」


 嘘は付いていないぞ。 この人にはできれば嘘は付きたくない。『テレビ』は多分マティルド姫が教えているだろうから特に説明はしない。


 「……そう。それでも構わないわ。 私の事はお母さんとかお母様って呼んでもいいのよ? あの娘の同郷の娘だもの。 私の娘みたいなものだわ」


 「いやそれはさすがに」


 えー、と、またもや悲しそうな顔をするマリーイ様。


 「わ、分かりましたよ……二人っきりの時だけ、その、時々甘えてもいいですか?」


 どうやら私にもホームシックになる事があるようだ。そういう時はお言葉に甘えさせていただこう。


 ぱぁっと表情が明るくなるマリーイ様。 表情がコロコロ変わる人だ。 公的な時に見た凛々しい印象とは全く違う。こっちが本来の彼女なのだと分かる。


 「時々とか言わずに、ね! 毎日だって甘えていいんだからね!」


 嬉しそうに私に抱きつくマリーイ様。


 「ほら、じゃあゆりかちゃん、お母様と翻訳飴、交換しましょう?」


 ね? と、 屈託のない笑顔で、翻訳飴を2つ取り出すマリーイ様。


 「うー……じゃあ……お母様……お願いします」


 おでこと髪の毛にキスされ、まるで幼児を寝かしつける母親のように、私に口づけをするマリーイ様。初めに感じた情欲のような雰囲気は鳴りを潜め、本当のお母さんのように私を優しく抱いてくれた。



 翻訳飴の交換が終わり、私はそのままマリーイ様に甘える形でベッドの上にいた。


 「そうそう、 パーティーであの娘が『私には注意してね』って言ったと思うけれど」


 ありゃ、ばれてーら。


 「マティルドのあの意味は、そうね、ゆりかちゃんも気がついていると思うけれど、私は可愛い女性が好きなの」


 えっへん! と自慢げに胸を反らすマリーイ様。 いや立場的にそんな堂々とされても。


 しかし初めは敵的な意味での要注意かと想い、その次は『何故か日本語が出来る』という意味での気をつけてかと考え、最後に単純に『マリーイ様は女性が好きだから気をつけて』なのだと気がつかされた訳だ。


 でも私とこうしてるってバレたらよろしくないのでは?


 「ああ、私のこの趣味は夫も知っているわ。 夫も男色家でね」


 な、なんだってー! あのイケメンさんが!!! 腐った妄想が瞬時に脳内を駆け巡った。


 「うふふっ、私もそうしてあの人が他のイケメンさんとどうのこうのしているのを妄想するの、大好きなのよ」


 お母様は貴婦人でもあった。


 「ちなみに、あの人も私が女の子といたしているのを妄想するのが好きなんですって」


 だから安心してね、という事らしいが……なんというか、歪んでいるけれど仲のいい夫婦なんだなぁ。そりゃマティルド姫がああなる訳だね。


 「あの娘はあなたを私が盗るのではないかと警戒していたみたいだけれど。くすっ、正直、相手があの娘じゃなかったら全権力使ってでもあなたを私の後宮に引き入れてたわ」


 一瞬、色欲の視線を私に飛ばしてくるマリーイ様。 快楽に背筋がゾクッと震えたが、一瞬だけの事だった。またお母様モード……いや、公妃様モードになったようだ。 ベッドから降り、立ち上がって私を直視した。


 「過去のあなたならともかく、今の『勇者富士見ゆりか」は、それを望んでいない。そうでしょう?」


 今、私は試されている事が分かった。


 お母様だの愛人だの公妃だのと、いろいろなモードが瞬時に切り替わるなぁ。でもかっこいい!


 私もまた立ち上がり、 マリーイ様の前に跪いた。


 「私は、先ほどのパーティーのように、残虐に人間を脅かす存在は許せません。でも正直なところ、私が単純にこの世界の為に戦う義務、という物も感じていません」

 

  私は跪いて顔を下げている為、マリーイ様の表情を伺う事は出来ない。

 

  それでも!

 

  「マティルド姫にマリーイ様。 ユスティーナさんやウルシュラちゃん達が住むこの世界を守りたいと想います。でも自分には直接戦う力がありません。 これから一体勇者府で何をすればいいのでしょうか……?」


 「お顔をあげなさい、勇者・富士見ゆりか」


 私はその言葉に従った。 優しくも、これから掛けるであろう迷惑に申し訳が立たないような表情を浮かべるマリーイ様。


 「あなたの為だけの組織を作りなさい。ここはあなたの世界ではない。 命をかける理由も無い。けれど、それでも戦ってくれるというのなら。 私達はあなたのワガママを全て受け入れましょう」


 私の、ワガママ……? 私の為の組織……?


 「あなたはもとから王国連合軍元帥クラスの権限をもっているわ。 好きな人材を登用出来るの。それであなたが好む、歌って踊れて、戦える女の子を集めればいいわ。現時点では勇者府、なんて名称ですけれど、それじゃあ求心力がいまいちね」


 ふーむ、と考えるマリーイ様。 あれ、なんかいつのまにかお母様モードに戻っている。


 「ゆりかちゃんは歌って踊って戦う戦法の事を、ヴァルキュリア戦術と言っていたわね? ならこれはどうかしら……」



『ヴァルキュリウルス・セラグライオ』



 「ヴァルキュリアの意味も、マティルドから聞いたのよ。 あなた達の世界の神話の戦乙女なのですってね。戦乙女達の後宮! あなたにぴったりだわ!」


 ヴァルキュリウルス・セラグライオ! かっこいい響きだね!



 「踊り子として……いえ、あなた達の言い方ですと、アイドルですわね。対外的にはアイドル集団として動きながら、魔王を倒す……というのはどうかしら? もちろん、最大のスポンサーは私達王国連合よ。世界を旅しながら魔王軍に苦しむ人々を助け、歌と踊りで安撫する。 まさに勇者であり、偶像(アイドル)ね」


 どうかしら? と素敵にウインクしてくるマリーイ様。そしてそれはとても素敵な提案だった。


 憧れていた自分のアイドルチーム! 女の子とイチャイチャして、ついでに世界も守れちゃう!



 「……わかりました。勇者府改め、『ヴァルキュリウルス・セラグライオ』を設立し、私は世界を救う勇者アイドルとなりましょう!」

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