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乙女の心

今日は友達と・・。

 日曜日の昼、映画館から出てきた(はるか)美月(みつき)はお昼ご飯を食べることにした。

「モールが出来て便利になったね。」

「うん。ここのフードコートは映画の割引券も使えるし、金欠の私にはお財布に優しいよ。」

「遥ったらまた金欠なの? お年玉はどうしたのよ。」

美月はしまり屋で貯金が趣味だから、遥はよくこんな風に注意される。

「福袋を買って、服を買ったらなくなっちゃった。」

「もうっ、あるだけ使うんだから・・。今日の映画代はどうしたの?」

「・・・来月のおこずかいの前借り。」

「大人になってカードローンにだけは手を出しちゃダメよ!」

「はぁ~い。」

遥もわかってはいるのだが、お金が手元にあるとついつい気が大きくなって使ってしまうのだ。


「美月は、なに食べるの?」

「うーん何にしよう。遥は・・・ハンバーガーのセットか、ぶっかけうどんだね。」

「当たぁ~りぃ~。安くてお腹いっぱいになるもん。」

ここのフードコートは最近改装したのだが、新店舗はどこも値段が高い。一階にあるレストラン街よりも高い料理もある。そうなるとどうしても定番に落ち着くよね。


美月はキョロキョロとお店を見廻していたが、ハッとして遥の腕をつかんだ。

「遥、あれって恵麻ちゃんじゃない? あのラーメン屋のとこ。」

確かに恵麻ちゃんの後姿が見える。今、ラーメンを注文している所らしい。

「デートにラーメンとは、芳樹(よしき)も浪漫のない男だね。」

「隣にいるの武田君じゃないよっ!」

「えぇー?ウソッ。今日はデートだって言ってたよ。・・・ホントだ。芳樹じゃない。カッコよすぎるわ、あの男の人。」

恵麻ちゃんは大学生のような背の高い男の人と一緒に、テーブル席に座ってラーメンができるのを待っていた。笑いながら楽しそうに話をしている。

・・・いったいどういう関係なんだろう。


「・・・とにかく私たちはあっちで食べよ。なんか気まずいし。」

美月が遠慮して、遥を引っ張って反対の方向に歩いて行く。

「こっちに座るんなら、私もうどんにする。」

美月がそういうので、二人でぶっかけうどんを注文した。

セルフでチョイスできる天ぷらの棚を見ていたら、山内君が言っていたちくわの天ぷらがあったので、遥はついついそれをうどんの中に入れてしまった。美月は煮卵の天ぷらにしたようだ。


トレーを持って席に座ると、美月はコップの水を飲みほして、浄水器の所までもう一度水を入れに行った。

遥がうどんをすすっていると、美月が帰って来て溜息をつきながら席に座る。

「美月、そんなに気にしなくてもお兄さんか従兄だよきっと。」

「あんな人いない。うちは近所だから恵麻ちゃんちの親戚の顔まで知ってるの。」

「うわっ、それはすごいね。でもそれならあの男の人は誰なんだろう?」

「でしょーう。のんきな遥でもそう思うよね。」

「のんきって・・・ま、否定はしないけど。でものびないうちに食べなよ、美月。美味しいよ。ちくわ天がこんなにぶっかけに合うとは思ってなかったな。」

遥がそう言うと、美月はやっとうどんを食べだした。

「あ、この煮卵の天ぷらは正解だった。中が半熟だ~。どうやって煮たり揚げたりしてるんだろう。」

「でしょう、それ美味しいよね。」

「あれ? 遥はいつも煮卵かささみの天ぷらでしょ。今日はちくわなんだ。」

美月は変なとこで鋭いよね。

「・・・ちょっとね。気分を変えたかったっていうか・・。」

好きな人と同じことをしてみたいという、乙女心なのかしら。

ということは・・・。

遥は少しずつ自分の心の変化に気づきかけていた。

山内 (あに)じゃなくて、(おとうと)なんだ。性格は正反対に見えるのに、なんで気になるんだろう。



 遥たちが食べ終わって返却口にトレーを返すと、美月が「ちょっとトイレ。」と言って、うどん屋の裏にあるトイレに行ってしまった。

美月も恵麻ちゃんのことで興奮して、水ばかり飲んでるからだよ。

遥がそんなことを考えながら女子トイレの前で美月を待っていると、反対側の男子トイレから芳樹が出てきた。

「うおっ、びっくりした。遥はこんなとこで何してんだ?」

「何って、美月と映画。」

「ああ、近藤(こんどう)か。ふーん、じゃあな。」


芳樹が去って行って気が付いた。

あっちに行ったら恵麻ちゃんたちがいるじゃんっ。やばくない?!

トイレから出てきた美月に緊急事態を告げようとしたら、先に美月に(さえぎ)られた。

「ごめん、遥。今日は帰っていい? 予想はしてたけど、なっちゃったみたい。」

「え、えっ? あれ?」

「うん。手持ちが少ないんだ。」

「そっか。美月は酷いもんねー。いいよ、一人で帰れる?」

「今日はお母さんがいるから迎えに来てもらう。ごめんねー、急に。今日は楽しみにしてたのになぁ。」

1月の始めに一緒に図書館に行って以来だったものね。月の終わりになってやっと一緒に遊びに来ることができたのに残念だ。


美月と別れてから気になったのは恵麻ちゃんのことだ。

遥はトイレに入って、ショルダーバッグの中から変身グッズを取り出した。

まずは髪型からだね・・・・。

今度は何に変身するのかな?

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