4国家試験~平民部門~
指の先まで近づいてくる火が煙と共に灰を汚して行く。それでもそれを吸いたくなるのは、言葉を遮りたくなるから。もうすぐ始まる50分の延長戦までのわずかな時間、未来の騎士を育てる先生方は、何の話もせず一本の葉に集中していた。
余令がなって、急ぐ者もいればルーズな者もいる私たちは許された鼓動の数を誰に感謝することもなく、生きている。そして、自分だけの戦場を乗り越えて行くんだ。さぁ新たな騎士の候補よ、挑め!おのが戦場へ!
題一問
二重スパイとみなされ、処刑された女は?
その頃、サクの友人達は集まって今後のサクのサポートと自分達の未来を考えていた。
「ねー風、この桜生国で化けもんが多いのは勉強してて、何となくわったんだけど、風は何でサクの前に現れたのよ」
「イロハはホント口が悪い!化け物じゃなくて聖なる生き物だ。まったく。僕が、サクの前に現れたのは、サクが言い伝えの蒼い髪したヒーローだと確定したからさ」
「でも、伝説の草剣とやらは抜けなかったんでしょ?」
「だけど、サクみたら何か懐かしくなったんだあの面影が。まるでジャンヌさんの背中見てるみたいで」
「ジャンヌって二重スパイの罪で殺された、ジャンヌダルク?」
「さっすが、ななっおほん、菜の花ちゃん」
じー。話についていけず、ユーリはすこしイラついていました。
「そんな事よりちょっとサクの様子見に行かないか?」
「えっやだ、ユーリ覗き見?」
「ばっばかか、イロハ!風呂覗きにいく見たくゆーな!」
ばかとは言ったものの、イロハの入浴シーンがチラッと脳裏を過ったユーリはすこしのぼせてしまいました。
「あっあたし菜の花と話があるの、サクの所には風とユーリがいってよ。もし落ちてもさ、男同士の方が話しやすいでしょ?
ねっ菜の花、いいじゃんね!」
イロハの勝手さにはみんなあきれ果てていました。
そして一行は菜の花とイロハ、風とユーリに別れて解散しました。
風を切って鈍くひびく剣の音。
試験会場では筆記試験が終わり、実務試験が行われていました。
「ひゅー、かっこいー!やっぱ剣は男のロマンだねー」
「ユーリは国家資格とらないの?」
「俺様とあろーお方が、持ってないわけないっしょ?
ホレっ」
そこに光るのはサクの受けた平民部門を遥かに越える、むしろ騎士の誇りクローバーゴールドのバッチでした。
騎士には階級があり、下から
平民部門「チェリーシルバー」
貴族部門「クローバーシルバー」
王族、神族部門「チェリーゴールド」
王、神直属部門「クローバーゴールド」
と分かれていました。
ユーリがクローバーゴールドを持っていたということは、全ての試験を突破し、堂々と桜生国を出入りできると言うことです。
「すっごいんだね、ユーリ以外とかしこーい」
「へっへーん」
「すごいすごい、あっサクだ!見つけたー!」
風があまりにも興味を持ってくれなかったので、ユーリはしばしへこみましたが、サクを見る風の姿があまりにも可愛くて弟の姿を思い出していました。
二人が話していると、丁度試験を終えるベルが流れました。
二人はサクのいる休憩所へと行きました。
「サックー!おっつっかっれ!」
ユーリをみてサクは安心しました。さっきから風は休憩所のそとであたふたしていました。
「風っちさっきからキョロキョロしてんのよ」
「煙草嫌いあわゎあわゎサクー助けてー」
するとサクはクローバーをひと掴みして布に擦り付けました。
神に使えるものは昔から煙草の煙に弱い事を知っていたので、本で読んだ四つ葉で編んだクロールと呼ばれる神に使える精霊が持っている羽織を真似て作ろうとしたのです。
本物とは似ても似つかない質ですが。それでも風は喜んでくれました。
「サクすごい!クロールだね!天才だよ!ありがとう!!僕のクロール古くなったからおじいちゃんに新しいのもらわなくちゃ」
「クロールか、サク、よく思いついたな」
丁度その頃試験の結果が発表されました。
サクの番号は756番です。
3人は左上からゆっくり番号を読みました。
、、、740 747 748 749 750 753 756
「あった!あったよ!756!!!」
3人は大いに喜びました。
「よし、!サクも汗かいてきもちわるいだろうし、七龍温泉街にでも行きますか!俺のお奢りで、桜湯だ!」
「おっ!桜生国名物桜湯温泉!肩こり腰痛、精霊にも優しい桜湯温泉!ユーリ最高!僕初めてだよ‼」
テンションの上がったやろーどもは仲良く肩を組んで温泉街に消えて行きました。