2 草剣カヤブランディス
鳴り止まない鼓動で目が覚めました。
この日はサクは珍しく早く起きました。昨日の声が気になったのでしょう。そしてふと頭に過ったのです。西のナナシズカの森、鳥居の中、深い奥に眠る木の根もと。
それをイロハに書き置きすると、サクはナナシズカの森へと向かいました。
「サクー朝御飯だょー、サク?、、、!?
ナナシズカの森って!
ダメよあの森は神隠しに会うの!止めなゃ」
「イロハちゃん、今日は学校お休みでしょ?受験勉強の予習にでもいくの?」
「お母さん、それどろじゃないよ‼サクが!サク、、、」
イロハの泣きそうな姿に母、カロアは察して抱きしめました。
「そう、サクがナナシズカの森へ行ったの、。大丈夫よ、サクは神様が私達に送ってくれた宝物だもの、隠したりなんかしないわ。それにサクはたくましいのよ?国家騎士の資格をとってこの孤児院を守ってくれるんですって。サクを信じましょう。」
カロアの温かさに、イロハは落ち着きを取り戻し、サクを信じて待つことにしました。
その頃サクはナナシズカの森に着き大きな鳥居の前に立っていました。ブォー、鳥居の中からは不気味な声が聞こえてきます。サクはこの森の言い伝えを思い出していました。
赤き鳥居の先、選ばれし者だけに森は心を許す。蒼き髪の桜色の瞳の勇者、四葉の心臓を持った風の君を連れ、二つの心の波長があったとき、鳥居は大木へと繋ぐ道となる。
蒼い髪、桜色の瞳、それはサク自身を現しているようでした。
風?
心にそう過ったとき、強い突風が吹きました。そして振り返ると、赤い鬼の面をつけた緑色の物体が宙に浮いていました。透き通ったそれはまるで亡霊のようでした。風の君、、、そう頭に浮かんでその亡霊の心臓辺りを見ると、そこには四つ葉が浮かんでいました。不意にサクが四つ葉に触ろうとすると、
「わっ」
仮面の奥から男の子の声が聞こえてきました
「常識知らずの人間だな、いきなり心臓掴まれたらたまったもんじゃないっての!僕はじいさんに頼まれて、迎えに来ただけなのに、殺されちゃうなんて聞いてないよーもー」
突然表れた鬼の面の亡霊は何やらサクを迎えに来たようでした。
「で?いかにも、風の君とは僕の事だが?って君、話せないんだっけ?めんどくさいな、、、ぶつぶつッあっ!何で僕が君を知ってるか?ふふーん、僕は風様様だぞ!世の中のことはたいてい知ってるさ」
何だかお喋り好きでうるさい亡霊は風の君と名乗りました。風の君?それは言い伝えに出てきた風の君だろうか?サクは試してみました。風の君の手をとって、鳥居に突っ込んだのです。
「わっ、ムリムリ‼君は確かに言い伝えの勇者のこだ!でも波長もあってないのに無理に突っ込んだら、、、」
そのまま二人は時空の歪みへと入り込んでしまいました
ピーチュンチュン、キュン、ニャー
「あたたたたー、言わんこっちゃない、森の中に奇跡的に入ったみたいだけど、どこだろう、、、ん?サク?」
サクは一筋の光に目をとらわれていました。
「うわっ更に奇跡だ!草剣、カヤブランディス!!」
誰に命じられた訳でもないのに、サクは伝説の草剣にゆっくり近づき、そうっと引き抜こうとしました
「まさか、、、!?」
草剣は、、、、
地面から一ミリも動かず、サクには引き抜けませんでした
「わっはっはっはっはっ、焦るでないサクよ」
天から聞こえた声は昨日聞いた声と同じでした。
するとさっきまでただの木だったのが、突然目と口を生やしました。
「これは私の本体ではない、全ての植物は繋がっておる。仮の姿で失礼する。サクよまだカヤブランディスには選ばれていないようじゃな、察するに、心が若いと見える。先走り過ぎて回りの声に耳を傾けていない。国家騎士とやらを受けるのであろう?その後にでももう一度来てみるとよい、今よりも仲間や、心の繋がりが強くなってるであろう。風の君よ、サクを頼んだぞよ!でゎ」
「あっおじいさん!ん、もー次に会えるのわかんないのにぃー!って、何か僕、任されちゃったからさ、これから宜しくね、サク!」
サクはすこし残念そうでしたが、静に頷きました。
そして地面にゆっくり書きました。
よろしくね、風