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アルトグレンツェにて、賢者と妖精と

「――フム、そんなことがあったのか」

 エインセールの話に一つの区切りがつき、オズヴァルトが口を開いた。

「そこで彼とは別れたのかい?」

「はい、もう大丈夫と言われて」

 エインセールは少し前の記憶を振り返る。

 塔に見覚えがあると言っていた。呼ばれる夢を見たと。もう少し詳しく聞いていれば良かったかもしれないと、今では思っている。

「あのあとしばらくして、思い出したんです。以前、ルクレティア様から聞かせてもらったおとぎ話の一つに、フヒトさんによく似た名前の人が出てくるんです。ルクレティア様は、ハイルリーベには子孫かもしれない人が住んでるっておっしゃっていました」

「確かに、古都ハイルリーベには異なる世界の物語や、不思議な言い伝えが残っている」

 オズヴァルトの視線は何かを思い出すように、遠くへと向けられた。

「それに、君とその彼が出会ったのはあの町の近くだ」

 古都ハイルリーベ。いばらの塔が呪いで覆われてしまってから時をせず、一夜にして呪いに閉ざされ、すべてが眠ってしまったとされている。

 今では町から伸びてきた呪いが森を大きく浸食し、近づくことすら難しい。

「そうなんです! もし自力であの呪いに打ち克った方だとしたら――と思い、慌てて戻ったのですが」

「見失ってしまったんだね」

「あうぅ……すみません」

 がっくりとうなだれたエインセールが、表情を改めて顔を上げた。

「導きのランタンを使ったのですが、ここを示していて……きっと、オズヴァルト様に助言をしてもらえということなのだと」

「――フム」

 オズヴァルトは顎に手をあてると、どうしたものかという風に眉を寄せた。そうすると困っているような、はたまた笑いをこらえているような表情に見える。

「エインセール。その彼のことだが……黒い髪で、黒い瞳ではなかったかな? そして髪は長くて、こう、頭の上の方で一つに束ねている」

「はい、そうです!」

 後頭部に挙げた指を回すオズヴァルトに、妖精の顔がぱあっと明るくなった。

「身長は僕と同じくらいだ。年は二十を少し越えたくらいか。頑固にも見えるが、まっすぐな目をしている。でもちょっとだらしなさそうだったかな」

「その通りです! とってもだらしないです! ひょっとして見かけたのですか?」

「見かけた……と言えるかもしれないな」

 オズヴァルトは背後を振り返ると、この村のシンボルである古びた教会を見上げた。

「さっき、塔に無理やり入ろうとして捕まった人がいたんだ」

「え――」

「今は教会の一室に入れられているんだが……会って話した方が良いだろう」

 つまりは、そういうことだ。

 オズヴァルトの助言は解釈の余地があまりにもなさ過ぎて、さすがにエインセールも言葉を失う。

「――フフ」

 そこへ微かな笑い声が流れてきた。二人が顔を向けると、声の主が歩いてくる。

「すまない。盗み聞きするつもりはなかったのだが」

 声の主はそう言って、真面目な顔つきに戻った。

「よければ私も、その変わった人物に会って構わないだろうか? 今聞いた話が事実なら、ルクレティアの救出に是非とも協力してもらいたい」

この後は一度、書きためなおしてから投稿します。

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