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幕間・サクヤの過ぎ去りし時、4
しばらく養生が必要なサクヤを、フヒトはそのまま自らの屋敷に留め置いた。フヒトはサクヤの性格とは反対に大雑把で、思考より感情を優先する性格であった。しかし性根はまっすぐで、話しているうち、フヒトとサクヤは妙に気が合った。
いつしかサクヤは約束の事も話していた。意志の固さに心打たれ、フヒトはサクヤの出立を手助けした。
その一つに、剣の扱いがあった。
フヒトは神性を宿した剣士だった。神性とは、この世界を生み出した大いなる魔法が、自然である火、水、風、闇、光に分かれたもののうち、さらにその一端のことである。水の神性を宿したフヒトの一族はどのような傷もたちどころに治り、また海にも好かれていた。ただの村人であったサクヤは月が満ち、欠け、再び満ちる間、フヒトから剣の扱いを学び、その他にも様々なことを教わった。
いつしか兄弟のような仲となった二人だったが、それは始まりと同様、唐突な終わりを迎えた。
戦が始まったのだ。
将である父とともに戦場に向かうフヒトに、サクヤは再び会うことを約束し、別れた。




