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幕間・サクヤの過ぎ去りし時、3
少女の言う事を、青年サクヤは不思議に思ったが、頼みとあらばと行動を始めた。
まず、準備のために最も大きな港町へと向かった。港は慌ただしかった。聞けば、近く戦が始まるという。
兵の募集をしていたが、戦はふたつき後でなければ行ってはならないというのが、少女の最初の頼みだった。
必要な荷物を買い、戻ろうとしたところで町の者に絡まれた。最初は取り合わなかったが、しまいには殴りかかってきた。抵抗するが、多勢に無勢だった。あっという間に叩きのめされる。
持ち物を全て取られようとした時、ある若者がそれを止めた。サクヤをのした男たちと争いになるが、若者は強かった。不敵に笑うと、瞬く間に男たちを返り討ちにしてしまう。
「大丈夫だったか?」
手を差し伸べた若者は、動けぬサクヤと荷を背負い、自らの家まで運んだ。
若者の名はフヒトといった。父は王にもっとも信頼されている将であり、自分がその一人息子だと教えてくれた。
またしばらく開きます。




