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マッドティーパーティー

 フヒトたちと合流したことで、馬車は港町へと動き出した。

 なぜか御者がいないのだが、魔法の力でなんとかなるらしい。

「たぶんなー」

「たぶん!?」

 ほろ酔いドリットの発言に、エインセールは気色ばむ。

「大丈夫なんですか!?」

「だいじょうぶ、だいじょーぶ! 早ければ明日中には着いてるって」

「寄り道して一週間になるやもしれないがな」

「この前は傑作だぜ! 古いノンノピルツを出て、新しいノンノピルツに着いたのさ! 『お遣いごくろうさま』って、新しいアリス様も笑ってくれたってワケだ!」

「それ、途中で逆走しただけじゃないですか!」

 ドリット、リューゲ、ライツの話を聞くうち、エインセールは嫌な予感を覚えた。

 もしかして、自分たちはとんでもない状況に陥ったのではないか。

「フ、フヒトさん。一度シンデレラ様に相談しませんか? このままでは一生ウォロペアーレにつけない気が……」

「いーでないのいーでないの。ヒャハハハハハ!」

「フヒトさん!?」

 狂笑はライツのものではなかった。顔を真っ赤にしたフヒトが、カップを手に笑っている。

「酔ってます!? 紅茶飲んで、なんで!?」

「おー、お前さんライツと同じ体質かぁ」

 ドリットが面白そうに体を起こす。

「おいおいそりゃないぜ! 俺様のアイデンティティはどうなっちまうんだい!」

「アヒャハハ、ざまあみろ! あいでんてーてーは知らにゅが、赤水あかみず飲むぅとオレぁ気分がよくなるのさ!」

「あかみず……? あ、紅茶!」

 一瞬感心して、次にそんな場合じゃないと妖精はぶんぶん首を振った。

 自分がどうにかしないと、この狂った時間は延々と続きそうな気がする。

「フヒトさん、まともになったと思ったら、なに更に変になってるんですか! シンデレラ様に怒られちゃいますよ!」

「しんでれらなあ~」

 フヒトの顔が弛緩した。

「あいつキレイだよなー」

「おーおー、言っちゃうねぇ」

 ドリットが口笛を鳴らす。

「すかし、えひんしぇーる。お前もすてたモンじゃなひ! 竹に入れ竹に!」

「た、竹!?」

「そう! 竹に入ればねーちゃんより大きくきれいになって●@☆+}=<IJJ)」

「気になるところで呂律まわってないじゃないですか!」

「こまけーこたいいの! リューゲの胸より期待できっから、ガンバ!」

 その声に、静かに飲んでいたリューゲが噴き出した。怒りの目で手首をスナップ。直後、フヒトの頭でカップが破裂した。倒れたフヒトにリューゲがのしかかる。

「お前! 私に恨みでもあるのか!? あんまりいじめると泣くぞ! 泣いて、責任取ってもらうからな!?」

「ひゃーん、おたすけぇ」

「ヒャハハハハハハ! いいぞもっとやれ! 俺はきらきらコウモリの歌で修羅場演出だ!」

「イエーイ、カンパーイ!」

「…………」

 カオスだ。

 馬車の中で繰り広げられる光景に、エインセールは呆然としたまま、呟く。

「もう、いいです」

 妖精はあきらめた。



「いいですか酔っ払いさんたち、私の声、耳をかっぽじってよぉーく聞いてくださいよぉ!」

「イエーイ!」

「声が小さいです!」

「イエー!!」

「私のこと知ってる~?」

「知らなーい」

「じゃあ教えちゃいます! 私は妖精、あなたの妖精! エインセールですよ~♪」

「カンパーイ!」

「ハロハロォ♪」

「ハロハロッ!」



「いいですか酔っ払いさんたち、私の声、耳をかっぽじってよぉーく聞いてくださいよぉ!」

「イエーイ!」

「声が小さいです!」

「イエー!!」

「私のこと知ってる~?」

「知らなーい」

「じゃあ教えちゃいます! 私は妖精、あなたの妖精! エインセールですよ~♪」

「カンパーイ!」

「ハロハロォ♪」

「ハロハロッ!」



「ハロハロォ♪」

「ハロハロッ!」

「いいですか酔っ払いさんたち、私の声、耳をかっぽじって――」

「あああ!」

 妖精が何度目かのライブを始めたとき、リューゲが叫んだ。

 リズムに乗っていた妖精が、据わった目で猫亜人を見る。

「なんですか、いま私の番ですよ!」

「すまん。忘れていたが、アリス様からそちらの騎士が来たら、話をさせるよう言われていた!」

「――え?」

 彼女の取り出した魔法の手鏡に、エインセールが我に返った。

「なんでそんな大事なこと忘れてるんですか!?」

 慌ててフヒトの姿を探せば、馬車の隅で死んだように倒れていた。

「フヒトさん、フヒトさん!」

「んふぅ……」

「なに気持ちの悪い声出してるんですか! 起きてください!」

「んー?」

「アリス様ですよ! ノンノピルツのお姫様です! お話があるんですよ!」

「……姫?」

 フヒトがぼんやりとした目で、エインセールを見上げた。

「あれ、膝枕は?」

「寝ぼけてないで、はい!」

 エインセールが手鏡を指し示す。リューゲによって、そこには少女の姿が映し出されていた。

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