空回る真面目さ
「ありがとう。そしてすまない。妙な方向に話を転がしてしまったな」
シンデレラがわざとらしく咳払いする。
「なんの話だったか……そうだ。『友として、フヒト殿の記憶が戻ることを望む』と、言いたかったのだ」
いっそ無理やりとも言えそうな軌道修正は、彼女の生真面目さゆえだろうか。
言ってから、改めて言うには気恥ずかしかったのか、鏡の中のシンデレラの視線がせわしなくさまよう。
「その、これからも何か思い出したら私に教えてほしい。ハイルリーベのことでも、身近な事でも。不安というものは、一人で抱え込むより分かち合った方がいい。いざという時は、私が協力しよう」
「友として?」
「そう、友としてだっ」
なぜか『友』を強調するシンデレラ。
「なら、母上や姉上たちのことを聞かせてくれないか」
「なに?」
迷走していた視点がフヒトに戻ってくる。
「シンデレラが信頼している家族のことを教えてほしい。話を聞いたら、俺の家族も夢に出てきてくれるかもしれない気がする」
「……」
「ダメか?」
フヒトの言葉に、シンデレラは慌てて首を振った。
「そんなことはない。私の想像力が足りなかったと、後悔しているのだ」
「後悔?」
「うむ。家族が誰か、思い出せぬフヒト殿の焦燥を、私はずっと話していながら気づけなかった……すまない!」
「――え?」
呆けた返事をしたフヒトの目前で、シンデレラが決意の顔をする。
「待っていてくれ。少し恥ずかしいが、お母様や姉様たちとの良いエピソードを思い出す」
「いや、少し待」
何が起こったのだろう?
よく分からないが、彼女の何かが暴走している。
「必ずや夢に出てもらうよう、全力を尽くす!」
あとなぜか、怖い。
「待った。ちょっと待った!」
「なぜ止める!」
「なぜって」
「止めるな!」
決意が怖い。
そしてなぜ怒られる。
「そんな大ごとに捉えなくいていいのだ! さっきの話で、気になったというのもある……その、『友』のことをだ」
「……どういうことだ?」
「ほら、あれだ。せっかく友となったのだから、シンデレラのことを知りたいというのもあったのだ……」
本当は互いに話し合えればいいのだろうが、と付け加える。
「あいにく手持ちの話がない。だから前借りで、聞かせてほしい」
シンデレラはしばらく目をしばたかせていたが、やがて聞いた。
「それでは、ちゃんと後でフヒト殿の話もたっぷり聞けるということか?」
「た、たっぷり?」
「……今の話は嘘か?」
「いや、そんな」
「ではたっぷり聞かせてもらうぞ。約束だ」
たっぷりは前提か。
シンデレラは、何かを納得するような風に顔を首肯させた。
「分かった。では友人に自分の家族ことを話す……そんな感じで良いのだな」
フヒトはうなずく。
「軽く紹介するような感覚で、大丈夫だ」
「軽くだな。分かった。ではまずどこから話そうか……」
思案していたシンデレラは、やがて「うむ」と呟き、話し始めた。
「私の実母はだいぶ前に亡くなった。今いる私の母は継母で、二人いる姉様たちも義理の姉となる」
そんなくだりから始まって、フヒトはシンデレラが「重い」という話は絶対に聞かないでおこうと決めた。
「真面目すぎてドジる」をやろうと思ったら、キャラぶれ感が。




