表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/79

白露の石

 手分けして『白露の石』を探し、しばらくしてから集合する。

「集まったかしら? ここから出るには十個の石が必要よ?」

 ユスティーネがフヒトたちに聞く。

「大丈夫です。十二個見つけましたよ!」

 エインセールが石を抱えて見せる。

「どうやら余ってしまったか? 俺も十二個だ」

 フヒトも手のひらに乗せた石を見せる。

「あら、ちょうどぴったりね」

 ユスティーネは余った四個分を、自分の見つけた六個に加えた。


「――ちょっとティーネ、ちゃんと探してたんですか!?」

「なによ。脱出方法を教えてあげたお姉ちゃんを疑うワケ?」

「昔からタダ働きさせられてた恨み、忘れたことはありません!!」

「あら、あの頃はお姉ちゃん子ですっごく可愛かったのに」

「まあまあ、ケンカはよせよせ」

 口論になりそうな姉妹の仲裁に入りながら、そうかあの言動は過去の反動か、と謎の納得をするフヒト。

「とりあえず、これで三人とも出られるな」

「ええ、おかげで助かったわ」

 ユスティーネがフヒトたちから離れる。

「私はオズの所に帰るけれど。アンタたちはルチコル村に行くんでしょう?」

「ああ」

「村の防衛に協力して、リーゼロッテ様の安否を確かめないといけません」

「そう。ま、大丈夫とは思うけど、危なくなったら帰って来なさいよ。特にエイン、古狼に会って泣いてたりしたら、食べられちゃうわよ?」

「泣きませんから! ティーネも早く行ってください」

 ユスティーネはエインセールの返事に軽く笑いながら、霧の向こうへ消えていった。

「仲が良いのだな」

「ええっ、今のを見てなんでそう思うんですか!?」

「今のを見たからだ」

「なんで私とあの性悪姉が……」と不満そうな声を上げるエインセールに、フヒトは笑って白露の石をかかげた。

「それより早くここを出よう。思いのほか時間を取ってしまった」

「……そうですね。早くルチコル村に向かいましょう!」

 妖精の里の境界まで行く。

「フヒトさん、気を付けてください。結界を通り抜けると、普通とは違う移動になってしまいます」

「……つまりどういうことだ?」

「さっきここに来た時みたいに、宙に投げ出されたりするかもしれないってことです」

 フヒトは納得した。あの時の妙な落下は、結界を通り抜けたせいだったのか。

「心得た。さっきこそ失態を演じたが、気を付けるとしよう」

「私も、注意しておきますね……それでは、行きましょう!」

 石を霧の中でかざす。目の前の空間が水面のように揺らぎ始めた。

 ユスティーネの話では、ここに飛び込めば外に出れるはずだった。

「三つ数えてから行くぞ」フヒトが言った。「一、二……」

 一瞬、時間が止まる。

「三!」

 そして飛び込んだ。

 霧の景色が一気に消え、視界の端には陽光を浴び、よく育ったリンゴの木々が現れる。

 そして視界の中央には巨大な獣の顔が広がっていて、その開かれた口へと二人は飛びこんでいく。

 絶叫が上がった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ