白露の石
手分けして『白露の石』を探し、しばらくしてから集合する。
「集まったかしら? ここから出るには十個の石が必要よ?」
ユスティーネがフヒトたちに聞く。
「大丈夫です。十二個見つけましたよ!」
エインセールが石を抱えて見せる。
「どうやら余ってしまったか? 俺も十二個だ」
フヒトも手のひらに乗せた石を見せる。
「あら、ちょうどぴったりね」
ユスティーネは余った四個分を、自分の見つけた六個に加えた。
「――ちょっとティーネ、ちゃんと探してたんですか!?」
「なによ。脱出方法を教えてあげたお姉ちゃんを疑うワケ?」
「昔からタダ働きさせられてた恨み、忘れたことはありません!!」
「あら、あの頃はお姉ちゃん子ですっごく可愛かったのに」
「まあまあ、ケンカはよせよせ」
口論になりそうな姉妹の仲裁に入りながら、そうかあの言動は過去の反動か、と謎の納得をするフヒト。
「とりあえず、これで三人とも出られるな」
「ええ、おかげで助かったわ」
ユスティーネがフヒトたちから離れる。
「私はオズの所に帰るけれど。アンタたちはルチコル村に行くんでしょう?」
「ああ」
「村の防衛に協力して、リーゼロッテ様の安否を確かめないといけません」
「そう。ま、大丈夫とは思うけど、危なくなったら帰って来なさいよ。特にエイン、古狼に会って泣いてたりしたら、食べられちゃうわよ?」
「泣きませんから! ティーネも早く行ってください」
ユスティーネはエインセールの返事に軽く笑いながら、霧の向こうへ消えていった。
「仲が良いのだな」
「ええっ、今のを見てなんでそう思うんですか!?」
「今のを見たからだ」
「なんで私とあの性悪姉が……」と不満そうな声を上げるエインセールに、フヒトは笑って白露の石をかかげた。
「それより早くここを出よう。思いのほか時間を取ってしまった」
「……そうですね。早くルチコル村に向かいましょう!」
妖精の里の境界まで行く。
「フヒトさん、気を付けてください。結界を通り抜けると、普通とは違う移動になってしまいます」
「……つまりどういうことだ?」
「さっきここに来た時みたいに、宙に投げ出されたりするかもしれないってことです」
フヒトは納得した。あの時の妙な落下は、結界を通り抜けたせいだったのか。
「心得た。さっきこそ失態を演じたが、気を付けるとしよう」
「私も、注意しておきますね……それでは、行きましょう!」
石を霧の中でかざす。目の前の空間が水面のように揺らぎ始めた。
ユスティーネの話では、ここに飛び込めば外に出れるはずだった。
「三つ数えてから行くぞ」フヒトが言った。「一、二……」
一瞬、時間が止まる。
「三!」
そして飛び込んだ。
霧の景色が一気に消え、視界の端には陽光を浴び、よく育ったリンゴの木々が現れる。
そして視界の中央には巨大な獣の顔が広がっていて、その開かれた口へと二人は飛びこんでいく。
絶叫が上がった。