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マジックアイテム(※ギャグ回、エインセールキャラ崩壊アリ)

エインセールの性格がちょっと変わってます。

読み飛ばしても、一応大丈夫なようになっています。

シンデレラから武器をもらいました。

「私の持つ、この『導きのランタン』は、その人の行きたい場所を指し示す力をもっているのです!」

「ほう、そんなことができるのか」

「はい! さらに……って、あー!」

 エインセールが突然、大声を上げた。

「……どうした?」

「いえ、このランタンは、どこか別の空間から武器や防具をこの世界に導くことができるのですが……」

 どこか気落ちした様子で続ける。

「襲われた時、武器を出してフヒトさんに渡せばよかったな――って」

 巨大なゼリルーと戦った時のことを言っているようだった。

「うう……私って、うっかりしてました」

「あまり気にするな」

 そもそも、何事もなかったのだから。

「それより、それを使えば……本当に武具が出てくるのか?」

 小さなエインセールの手にしたランタンは、指でつまむほどの大きさしかない。

「あ、信じてませんね! じゃあ試してみましょう」

 エインセールがランタンを突き出す。飾りのリボンが遅れて揺れた。

「さあ、出す物を出してください!」


「…………なに?」

「出す物を出せと言っているんです」

 なんのことか、フヒトにはさっぱり分からなかった。

「武具を導くには、『ピスラ』か『輝晶石』が必要です!」

 ぴすら? きしょーせき?

「輝晶石は、魔力を秘めた特別な宝石だ」

 顔全体で疑問符を浮かべるフヒトに、シンデレラが助け舟を出す。

「魔力が薄れ、砕けた輝晶石を使って作られるのがピスラ。この世界の通貨だ」

 話では、微かに残った魔力は魔物が好むものでもあるらしく、ピスラが体内から見つかることもあるらしい。

「――待て、金をとるのか!?」

「当たり前です!」

 真面目な顔で、エインセールは言った。

「世の中、タダでモノが手に入るとでも思ってるんですか!」

「いや、まあ、それはそうだが」

「私はタダでこき使われるような妖精じゃありません!」

 エインセールさん、どうかしたんですか……?

 心の中で湧き上がった感情を抑え、フヒトは口を開く。

「しかし、手持ちにそんなものなどないぞ?」

「……」

 チッ。

 フヒトのその言葉に、導きの妖精はあからさまな落胆の顔。

 というか今、舌打ちした気がするのは空耳だろうか。

「それなら、私がなんとかしよう」

 助け舟を出したのはまたもやシンデレラだった。エインセールの態度に面喰った様子だったが、すぐに表情を繕う。

「些少の輝晶石なら持っている。しかし……その腰の剣は使わないのか? なかなかのこしらえに見えるが」

 フヒトは得物を鞘ごと外すと、軽く刀身を抜いた。姫が唸る。

「見事だな。人が作ったとは思えぬほど、美しい」

 さらに半ばまで引き抜いて、気付いたシンデレラの表情が曇った。

「……刃がないのか。不思議だな。どう見ても実戦用のつくりだ」

「俺にも、それが分からぬところで」

「フヒト殿の記憶が戻れば、そのあたりも分かるかもしれないな」

 フヒトも同じ気持ちだった。目が覚めたときから持っている剣……たとえ戦いに使えなくとも、持ち続けるつもりだった。

「しかし、その剣に見合うほどの物は手持ちでは難しいな……そうだ、エインセール。私の持ち物なら遠方より武器を引き寄せることも可能か?」

「はい、大丈夫です! でも、引き寄せるための魔力は使いますよ?」

「構わない」

 シンデレラは虹色の輝きを秘めた宝石を取り出す。それが輝晶石のようだった。そのまま、エインセールの掲げたランタンに近づけ、接触させる。

 次の瞬間、触れた部分を中心とした、ゆらめく光の円が出現した。円は徐々に大きくなりつつ、その内側に複雑な力線を刻んでいく。円が大きくなるにつれ、輝晶石は光の粒子となってランタンに吸い込まれていった。

 輝晶石がすべて消えると、今度は円の中心から何かが現れる。

 虚空から突如出現したのは剣の柄だ。シンデレラはせり出てくる柄を握ると、ゆっくりと引き抜いていく。

「昔、使っていた物だ。手入れは怠っていないから、使うのに問題はないと思う」

 光円が消える。シンデレラは手にした剣をフヒトに差し出した。鞘と、柄に付いた半円状の鍔に薔薇の意匠が施されていた。フヒトが刀身を引き抜き見れば、片刃の輝きがある。

「そのサーベルなら、形状も似ているから使いやすいと思ったのだが、どうだろうか?」

「おお……心遣いかたじけない。ありがたく使わせてもらいます」

 嬉々と、フヒトは刀を右の、サーベルを左の腰に差す。

「良かったですね、フヒトさん」

 武器の召喚を証明したおかげか、エインセールも元の様子に戻っている。

「では、今度こそ出立だな。連絡が取れるよう、この手鏡を持っていってほしい」

「手鏡……?」

 シンデレラから渡されたものを見る。しかし鏡面にフヒトの顔は映っていなかった。

「魔法の手鏡ですね。遠くにいる人と鏡越しに会話ができるんですよ」

 エインセールが説明してくれる。

「そんなことができるのか」

「私もルヴェールをあずかる以上、町を空けて同行するわけにもいかないからな……武運を。ルチコル村のこと、頼んだぞ」

 シンデレラの言葉を受け、フヒトはエインセールとともに出発した。

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