街の噂話
「王国脱走物語」1周年!
そして、記念すべき第60話!
完結目指してまだまだ頑張ります(`・ω・´)ゞ
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
「あの、知ってます? 第1王子様が城を脱走して、今、城下にいるらしいっすね。」
「へぇー、第1王子様が! そりゃ、また、どうして。」
「さぁー、そこまでは知らねぇっす。国でも出てみたいんじゃないっすかね?」
「あぁー、あの人はそんな感じするもんなぁ。でも、城下にいるんだったら、騎士団とかに見つかっちまうんじゃねぇの?」
「変装でもしてんでしょう。―――――な、あの人なら、女装とかしてても違和感なさそうですけどねぇ。」
「ぶっ! 女装って、おま、そりゃあねぇだろ! ――――――――――――・・・・・・いや、案外・・・アリか?」
***
「おう! お前、知ってるか?」
「どうしたよ。何を突然・・・って、お前、朝っから呑んでやがんな?」
「何、ちょっとだけよ。そんなことよりさぁ、酒場のマスターに聞いたんだけどよぉ、アレだってな、第1王子様が、女装して国を出るんだってな。」
「・・・・・・お前、何杯呑んだんだ? そうとう酔ってるだろ。」
「酔ってねぇ! 呑んだなぁ一杯だけだ!」
「本当かよ・・・。」
***
「はぁい! 頼んだもの出来てる?」
「へぇ、確かに。」
「――――――さすがの出来栄えね。うん、ありがとう。お代はこれで。」
「・・・。」
「あ、そういえばさぁ、さっきね、すっごい美人さん見たのよ! 金髪の長~い髪でさ、綺麗な顔しててさぁー。――――――・・・なんかね、第2王女様をもうちょっと凛々しくした感じだったわ。」
「・・・・・・もしかしたら、それ、第1王子様かもしれやせんね。」
「へ?」
「さっき聞いたんすけど、なんでも、第1王子様が城下にいて、女装して国を出ようとしてるらしいっすよ。」
「ええー! うっそぉっ!」
「噂っすけどね。」
「ふぅん・・・・・・でもまぁ、確かに、言われてみれば、第1王子様によく似た顔してたわね・・・。」
「噂っすよ。」
***
「ただいまー!」
「あぁ、おかえり。」
「ねぇねぇ、聞いてよ。今ねー、大通りでねー、すっごい美人さんを見たんだけどさー。それがね、第1王子様の女装なんじゃないか、って噂なのよ。」
「え、えぇ? どーゆうこと?」
「噂よ、ウ・ワ・サ。なんでも~、あーっと、なんだっけ? ・・・あ、そうそう。なんでも、今さぁこの国さ、鎖国してんじゃん? 王子様は外に出て、今後のために勉強したいんだろうね~。でも、鎖国してるのに外には出せない! って邪魔が入ったんだろうね、可哀想に。そこで、城を勝手に脱走して、女装して国を出ようとしてるんだってさ。」
「へぇ~・・・王子様ってのも大変だね。」
「そうだねー。私らは一般人で、本当に良かったよね~。」
「そうだね。――――――あ、やべ、時間だ。仕事行かなきゃ。」
「夕飯は?」
「今日は飲み会があるから、いらないよ。ありがとう。遅くなるかもしれないから、待ってないで寝てて。」
「りょーかい!」
「じゃ、いってきます!」
「行ってらっしゃーい!」
***
「あ、金髪の美人さんだ。――――あの人かな?」
「おいおい、他の女に目移りしてたら、奥さんに捨てられちまうぞ?」
「いやいや違いますよ! その妻から聞いたんです!」
「聞いた? すげぇ美人がいるって?」
「はい。しかも、その人は第1王子様が女装しているんだそうで。」
「はぁぁ?」
「噂ですよ、噂。なんでも、邪魔されちゃって出国できないから、勝手に城を出てきて、見付からないように女装して出国するんだとか。」
「邪魔? へぇー、誰に?」
「さぁ、そこまでは知りません。」
「――――――・・・あー、そういやぁ、俺も似たような話を聞いたなぁ。なんでも、第1王子様の暗殺を考えてる不届き者がいるんだと。」
「え? 暗殺を?!」
「まぁ、これも噂だけどなー。」
「ってことは・・・もしかして、あれですかね? 殺されないために、国外に逃げようと・・・?」
「あー、もしかしたら、そうかもなぁ。その、出国を邪魔してるっつー奴らが、暗殺とか考えてんのかもな。はぁー王族ってなぁ、いろいろ大変だなぁ!」
「そうですねー。僕とかもう一般人で、本当に良かったです。」
***
「・・・・・・言われた通り、客に片っ端から噂流してるけど、本当にこれで大丈夫かな?」
酒場のマスターの呟きを聞いた者は、誰もいない。
***
「・・・・・・言われたとおりぃ、知り合いにぃ片っ端から話してみてるけぇがぁ、大丈夫かぁ?」
最終処理場の男の呟きを聞いた者は、誰もいない。




