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王国脱走物語  作者: 井ノ下功
第3章
57/90

呼ばれる王女

 


新年一発目!

今年こそ完結させたいです!


2014年もどうぞよろしくお願いいたします。



 

 

 国王の執務室を出て、まず第2王女が向かったのは、騎士団のところだった。今頃は右大臣が出動命令を出しているはずである。

 カツカツカツと低いヒールを高らかに鳴らして、広い廊下のど真ん中を歩きゆく。

 王宮は、国王の寝室・執務室を中心に、南側が文官や広間の領域、北側が騎士の領域となっている。騎士団のほとんどは別の場所にいるのだが、団長副団長と一部精鋭の者たちは、王宮守護のためここに寝泊まりしていた。

 すでに城を出てしまっているなら仕方がないが、もしまだ団長がいるのなら、伝えたいことがあった。


(狡猾な兄貴のことよ・・・・・・分かりやすくその辺にいるはずがないわ。多分、思いきり変装して――――万全を期して、女装くらいしてるかもしれないわ。)


 そうなったら、見つけるのは至難の技だ。その旨を伝えなければならない。

 団長を探して歩き回っていると、その尋ね人は向こうの方からふいに現れた。


「おや、第2王女様・・・お加減はもう宜しいのですか?」

「? 体調は、もともと悪くなどありませんわ。」

「おや、そうでしたか。それは失礼いたしました。左大臣様からは、あまりのご心痛にお食事もままならない、と聞き及んでおりましたので。」

「なんですって? 左大臣殿が?」

「ええ。」


 頷く団長に、王女は形の良い眉をひそめた。何かが引っ掛かる。が、その“何か”が何なのか分からない。


(・・・・・・まぁ、いいわ。)


 今優先すべきことは、こんな自分の些細な違和感ではない。


「そんなことより、団長殿? 右大臣殿から、出動命令は受けまして?」

「・・・受けたのですが・・・――――――」


 と、騎士団長は言葉を濁した。


「どうかしたの?」

「・・・・・・実は・・・・・・左大臣様に、出動を止められてしまいまして・・・・・・。」

「――――止められた? 左大臣殿に?」

「はい。」


 団長は神妙な顔で頷いた。


「僭越ながら右大臣様と共に抵抗したのですが、左大臣様にはお聞き届けいただけず・・・。」

「左大臣殿が出動を止めた・・・?」


 王女はうろんげに繰り返し、首を傾げた。


(一体、何のために? 騎士団の出動を止めて、左大臣に何のメリットがある?)


 騎士団の出動目的は、第1王子の捜索のため。それを邪魔するということは、第1王子が見つかってしまっては困るということ。


(つまり、暗殺を企む黒幕?)


 いや、しかし、と王女は思い直した。


(あの無駄に小賢しい兄貴のことよ。きっと、左大臣にまで根回しをして、騎士団に出動させないよう言ったのだわ。賄賂の罪か何かをちらつかせて。)


 そうに違いない! まったく困った兄貴だ・・・――――――――――と、怒り心頭で黙り込む王女を、騎士団長は少しニヤリとして見ていた。


「~~~~ま、第2王女さま! 王女さまー?!」


 廊下の向こうの方から、メイドの声が聞こえてきた。


(わたくし)はここよ! どうかしたの?」

「あ! 王女様・・・――――――――――」

「何があったの?」

「――――――実は、その・・・・・・だ、第3王子様が・・・」

「っ! カルディアに、何かあったの?!」


 その時 王女の脳裏をよぎったのは、父の後を追い力なく横たわる弟の姿だった。

 色を失う王女に、メイドは恐る恐る告げる。


「第3王子様におかれましては・・・・・・・・・城下に、下りられたご様子で・・・――――――」

「――――――・・・はぁ?」


 思いっきり顔を歪めて言った王女に、メイドも団長も身を引いた。怒気が立ち上って見えるようだ。


(ぁぁあああああああああっ! 本当にもう! どいつもこいつも・・・っ!)


 この時シルヴィアは最高潮に苛立っていた。

 兄貴が脱走し、父上が亡くなって、その上アリシアは戻らないし――――――その上、弟カルディアまでもが城を出たですって?!

 正直、発狂しそうなほどの怒りと混乱にさいなまれていた。ぶちギレる寸前である。

 そこに、


「・・・・・・2王女様ー! 王女様ー!」

「――――――今度は、なに?!」


 新たな知らせを持って別のメイドがやって来た。

 八つ当たり的に王女に睨まれ、一瞬身をすくめる。が、すぐに立ち直って、告げた。


「第2王女様付き従者長のアリシアが、つい先程王宮に戻られ、王女様を探しておられます!」

「アリシアが?! ――――――・・・ようやく来たのね、まったく・・・。すぐに戻るわ。貴女は先に行って、アリシアに私の部屋で待つよう言いなさい。」

「はいっ!」

「団長殿は騎士団を出動させて。捜索対象は第1王子および第3王子。左大臣より私の命令の方が優先されるべきなのは分かるでしょう?」

「・・・・・・・・・。」

「団長殿?」

「あ、は、はっ! 第2王女様の仰せのままに――――」

「頼んだわよ。」


 自分を取り戻し、的確な指示を素早く下して颯爽とその場を後にする王女には、苦い顔をする騎士団長は目に映らなかった。

 

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