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王国脱走物語  作者: 井ノ下功
第3章
49/90

臆病な第3王子

 


かなり久々の投稿でございます。丸々4ヶ月ぶりくらいですね。

久々過ぎて、書き方がちょっとおかしくなってるような気がします・・・すみません(汗)

今年中にある程度 更新していく予定です。頑張ります。よろしくお願いします。



 

 

 第3王子、カルディアは、心底後悔していた。


(どうして・・・・・・僕は・・・・・・何もかもを知っていながら、誰にも・・・・・・言わず・・・・・・家族を、見殺し、に・・・・・・・・・)


 暗殺計画のことを誰かに教えていたら。

 事前に、父や兄へ、知らせていたら。


(きっと、死ななかったのに・・・・・・・・・。)


 第3王子は、高を括っていたのだ。

 暗殺計画のことをしっかりと聞いておきながら、どこかで、“何かの間違いなんじゃないか”“暗殺なんてされるわけが無い”と、思っていた。

 思い込んでいた。

 そして、現実を見ず、何もせずに悪を見過ごし。

 結果、唯一無二の肉親がこの世を去った。

 それなのに、


「・・・何とか、おっしゃいなさいよ、カルディア・・・!」


 どうして王女の言葉に答えられようか。

 第3王子は俯いたまま、背中を壁に預け、ずるずるとその場に座り込んだ。


「カルディア・・・?」

「・・・・・・ごめっ・・・なさい・・・・・・」

「―――――――――」

「・・・ごめんなさい・・・・・・・・・ごめん、なさい・・・・・・ごめ、ん、なさいっ・・・・・・」


 壊れたオルゴールのように、同じ音を繰り返し繰り返し、言い続ける第3王子。何も考えられない。考えたくない。目を開くことさえしたくない。罪悪感に押し潰されて、立つことすら叶わない。

 いっそこのまま父の後を追いたい――――――と、そう思い始めたその時だった。


「・・・逃げるのね。」

「っ?!」

「謝罪は逃げだわ。そんなもの、(わたくし)は受け入れません。」


 王女が、真っ赤に泣き腫らした目で彼を睨んでいた。


「貴方が、どうして何も言わないのかとか、何を知っていたのかとか、そんなこと今はどうでもいいわ。何を言おうと――――――全ては、後の祭り。死んだ者は、もう・・・戻らないっ・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「でも!」


 再び俯いた第3王子の顔を、王女の両手が包んで持ち上げた。


「――――――お兄様は、まだ、生きてる。お父様を殺した人間が、お兄様をも狙ってる可能性は高いと思うわ。・・・・・・生きてる人間なら、救える。救ってみせるわ。未来は変わるの! 変えられるの!」


 毅然とした態度でそう言い放ち、王女は真っ直ぐ胸を張って佇んだ。

 ふわりと波打つ金色の髪が、煌々と輝いて、まるで女神のような気高さである。

 王女は顔を引き締めて、踞ったまま呆然としている弟を見下ろした。


「私は逃げません。この国の王族として、責任を、果たすわ。」

「―――――――――」

「・・・逃げるのも立ち止まるのも貴方の自由だけど、間違っても、後だけは追わないでね。それだけは、絶対よ。」


 そう言って、王女は部屋を出ていった。

 第3王子はしばらく微動だにできずにいた。


(強いなぁ・・・・・・僕なんかとは、大違いだ・・・・・・・・・。)


 姉のような人間こそが、まさしく王族なのだろう。と第3王子は思った。

 姉や兄のように、逆境にめげず、悪を恐れず、いつも正しい方を向いて、堂々と歩んでいけたら・・・・・・なんと、清々しい人生だろうか。王族としても、人間としても。

 同じ親から生まれた兄弟なのに、どうしてここまで違うのだろう? 同じ血が流れているなら、同じことが出来る筈なのに。同じくらい強い筈なのに。


「何で・・・・・・僕は・・・・・・・・・っ!」


 握った拳を壁に叩きつけようとして、振りかぶったところでそれを止めた。ぶつけた時の痛みを予想し、身がすくんだのだ。

 そしてまた自己嫌悪。

 たったそれだけの予想で行動を止める自分が、何よりも憎らしく思えた。


(ご安心ください姉上・・・・・・自殺するほどの勇気すら、僕にはありません・・・・・・・・・。)


 自殺できるほどの勇気があるのなら、別のことに使ってますよ! と内心で意味もなく逆上しながら、王子は膝に顔を埋めたのだった。

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