表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王国脱走物語  作者: 井ノ下功
第1章
24/90

陥る左大臣


すみません、後から付け足しました。


よろしくお願いしますm(_ _)m



 

 

「夜分遅くに失礼致します。王宮に勤めております従者が1人、ジキル、と申します。我が直属の主より、言伝てを預かって参りました。」


 日が完全に暮れてから数時間が経ったある時に、左大臣の家にやって来た彼はそう言った。

 左大臣は、彼を睨んで言った。


「お前の主、とは?」

「申し訳ありませんが、お教えすることはできません。ご想像にお任せ致します。」

「何故、言えないのだ?」

「主が望まれたことですので。」

「ふぅん・・・。」


 左大臣は、訝しげに頷いた。そして、記憶を掘り返す――――――そういえば、似たような男を何処かで見たような気がする。はて、何処で、だったか・・・・・・――――――


「ところで、左大臣様。」


 思い出そうと首を捻る左大臣の、思考を断ち切るようにして、従者の男が話しかけた。


「ん?なんだ。」

「非常に、言いにくい事なのですが――――――第1王子の側近が、賄賂を渡していたというお話をご存知ですか?」

「っ!!」


 左大臣は、思わず息を飲んだ。さぁっ・・・と、左大臣の顔色が変わる。同時に、彼の脳裏には数年前のことが浮かんできていた――――――――――平民の出の男が、どうやって作ったのか、それなりの額の入った包みをさりげなく差し出して・・・『私のような平民では、到底辿り着けない高みに、貴方様のお力で、どうか、引き上げていただけませんか?』と・・・――――――――――左大臣はそれを受け取ったのだ。

 その反応を見て確信に到ったのだろう。従者は口角を少し上げて、上目遣いで左大臣を見た。


「主は、貴方様の処遇を決めかねておいでです。今後のご活躍によっては、見逃そうかとも仰っておりましたが・・・・・・いかが致しますか?」

「・・・・・・・・・。」


 真っ赤になっていた左大臣の顔は、すぐに真っ青に変わった。そして慌てて、


「ち、違う!違うんだっ!」


 否定した。


「賄賂を受け取ったのは私“だけ”ではない!あ、いや、私ではない!何かの間違いではないのか?!大体、証拠はあるのかっ?無いだろう?証拠も無いのに・・・無闇に疑いを掛けるでない!!帰れ、帰ってくれっ!」

「ミシェル――――かの側近が、捕まったのはご存知でしょう?」


 従者はたじろぐことなく、左大臣に詰め寄ると、低い声で捲し立てた。


「貴方様の目の前で、彼は連行されましたよね?陛下のお言葉も聞かれましたよね?賄賂のことが、陛下にバレていないとでもお思いですか?」

「・・・・・・・・・。」

「じきに、ミシェルに対する取り調べが始まるでしょう。ミシェルが話せば、全てのことは明るみになります。そうなれば、貴方様は失脚を免れ得ません。いいのですか?あのような小物の悪人と道連れになり、出世の道を外れる――――それが、貴方様の望みなのですか?・・・・・・このままでは、確実に貴方様は」


 最低の人生を歩まれることになりますよ――――――――――従者は怖い顔をしてそう言い切った。

 左大臣は、気持ち悪い浮遊感のようなものを感じて震えだす。膨れた腹の下とか、薄くなりつつある頭のてっぺんの辺りが、締め付けられるように熱い。そのくせ、手先や爪先の方は、キンッ・・・と冷えきって、死の予感のような感覚を携えているのである。

 罪を知られた恐怖と焦燥に脂汗を流しながら、思わず従者の胸ぐらにすがりつき、左大臣は懇願した。


「た、頼む・・・・・・。頼む、黙っていてくれないか?!金なら――――金なら、いくらでも出す!だから、頼む!」


 私の人生を終わらせないでくれ・・・――――――態度を急変させた左大臣に対し、従者は優しく語りかけた――――――ご安心ください。そうさせないために、(わたくし)が参ったのですよ、左大臣様――――――悪魔のように。


「金銭は求めておりません。我が主が求めるのは、貴方様の無償のご協力です。」

「協、力・・・?」

「ええ。――――――協力、していただけますね?」

「ああ!もちろんだ!私に出来ることならば、何でもしよう!」


 そうして、従者の言葉に含まれた意味も、彼らの目的も、彼が浮かべる笑みの裏も、何も考えずに左大臣は頷いたのである。

 





ありがとうございました(*^^*)



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ