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王国脱走物語  作者: 井ノ下功
第1章
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無自覚の商人


 久々に、このシリーズを更新致します!




 

 商人は酒場を出ると、まっすぐ『最終処理場(ダストボックス)』に向かった。

 変装、と言えば、友人のザックである。彼に頼めば、女装用の道具もコツも教えてもらえるだろう。

 ここから『最終処理場』まで歩いていくと、おおよそ2時間ほどかかる。


(行って帰って・・・・・・まぁ、日が変わる前には戻れるかな。)


 となると、他にもいろいろ準備したとしても、明日の朝一番にはここを出られるだろう。


(捜索の手が強まる、って言っていたけど・・・・・・大丈夫かなぁ。)


 用意できるものは、今のうちに出来る限りしてしまおう。と思って、商人は足を速めた。

 日は完全に沈みきり、夜の入り口に立った街は薄暗い。人の通りはまだまだ少なくないが、そのほとんどが、帰路に付いているようであった。

 さまざまな声が、会話が、空気が、商人の体を通り抜けて行く。


「~~~~だよね。今日の晩ご~~~~」

「~ったぁ!~~~~~~~」

「~~~たはアレ・・・何時にしゅ~~~~~」

「~~~~~~~けんな!!お前は~~~」

「~~~~かなぁ。まじ笑える。~~~」

「~~~~~に、暗殺を依ら~~~~~」

「なんですってっ?!」


 突然、すれ違った人が大きな声を上げたので、商人は思わず立ち止まって振り返った。

 道の中心、ぱっくり割れて出来た人垣の中心で、身なりの良い男女が2人、向き合って何やら言い合っている。


「どうしてそんなことをっ?!今、陛下と第一王子さ」

「落ち着け。こんなところで大声を出すな。」

「これが出さずにいられますかっ?!」


 商人は話を聞きながら、その内容を正しく理解して、固唾を飲んだ。


(これ・・・・・・ザックの受けた依頼だよね。陛下と・・・皇太子様の、暗殺。)


 その2人はしばし、睨み合っていたが、やがて、「――――場所を移そうか。」と言って、歩き出した。人垣が元通り、人波に変わる。

 商人はちょっと迷ったが―――――何故か、とても気になって、2人を付けていくことにした。

 会話が微かにだが、集中すればはっきりと聞こえる。


「どうしてそのようなことをしたのですか?」

「すべては王女様のためだ。お前も望んでいることだろう?」

「人死などは望んでおりません。それに、相手はシルヴィア様のご家族・・・――――なんにせよ、このようなことは許されません。今すぐ、依頼を取り消してください。」

「それは無理だ。」

「何故?!」

「既に金を払ってしまった。まだ殺されてはいないが・・・・・・おそらく、決行は明日ぐらいになるだろうな。」

「そんなっ・・・。」

「すべて、遅いのだ。もう計画は進んでいる。王女様を、玉座につけるための、な。もちろん、お前も協力してくれるだろう?」

「っ・・・・・・誰が・・・そんなことに協力しますかっ!シルヴィア様のご家族を手にかけるような真似・・・私は、許せません。いくら実の兄の頼みであっても、こればかりは聞けませんよ。」

「・・・・・・そうか。残念だ。なら、いっそのこと、王女様をも殺してしまうか。」

「なっ!!」


 女性の血相が変わった。


「貴方は・・・・・・今、自分が何を言っているのか、分かっているのですか?」

「あぁ、重々承知している。別に俺としては、今の王が変わり、第一王子以外ならば、誰が王になろうと構わないからな。むしろ、第三王子を引っ張り出して来た方が、都合がいいかも知れん。あぁ、そうするか。」

「まっ・・・待って・・・・・・待って、お願い。お願いだから・・・シルヴィア様には、手を出さないで!――――協力、する。するから・・・っ。」

「ふんっ。仕方がないなぁ、可愛い妹の頼みだ。――――最初からそう言えば良いものを。」

「・・・・・・・・・。」

「第一王子の今の居場所を特定して、しばらく見張っておけ。いいな。」

「・・・・・・はい。」

「まったく・・・こんなタイミングで脱走をするなんてな。まるで計画がバレてるみたいじゃないか。―――――殺されたら、報告しろ。」

「・・・わかりました。」


 そこで、2人は別れた。

 暗い顔をした女性は、そこに立ち止まったまま、俯いて、拳を握りしめていた。


「くっそ~・・・・・・あんのバカ兄貴め・・・。覚えてろよ。いつか寝首かいてやる。」


 怨みがましくそう呟くと、彼女も人ごみの中に消えていった。

 商人はそれを見送って、踵を返した。頭の中がぐちゃぐちゃしてきた。


(ええと・・・?今の男の人が、ザックに暗殺を依頼した人で・・・・・・女の人は、それを望んでいなかった。2人は兄妹・・・。男の人は、王女様を王様にしたい?いや、王女様じゃなくても・・・今の王様が変わればいいみたいだったな。で、第一王子様は今、城を脱走していて、女の人がそれを探しに行った・・・。)


 うーん、わけわからない!と、商人は考えることを放棄した。


 自分が、その第一王子様の脱走を手助けしている、という自覚もなく。



 私の頭の中も、だいぶぐちゃぐちゃになってきました・・・・・・(汗)


完結 目指して頑張ります!



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