表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合SS  作者: 梨久
5/5

あざと彼女2

「せーんり、おはよ」

「あ、お、はよう……」


 いつの間に、駐輪場に自転車を止めた私の傍に斎がきていた。確か斎は家が近くて徒歩通だったはずだ。

 やっぱり厚着可愛い。息を吐きながら「白いね」なんて言ってくる。それも可愛い。

 それにしても、昨日の今日で気まずすぎる私に対し、斎はごくごく普通に挨拶をしてくる。その秘訣は何ですか。私は昨日一睡もできずに幸せの余韻に浸っていたよ……。


「ん、隈……昨日僕のこと考えて眠れなかった?」

「えっ」

「図星かい!」


 言い当てられて驚いたけど、向こうがそう言いながら真っ赤になったのも驚きだ。

 斎の表情はころころ変わる。人見知りをしない向こうは、最初に出会った時からそうだった。泣いたり、笑ったり、怒ったり、そんな感情の表現がうまいところもとても好きだった。

 でも、照れている顔を見るのは初めてかもしれない。そういえば、いつでも余裕そうだった。


「じゃ、行こっか」

「お、うん」


 斎が、私と並んで教室に向かって歩き出す。

 そういえば、多分一緒に教室に行くのは初めてだ。私は家が遠いし、斎は家が近いし、そうめったに登校時間が合うことはない。合ったとしても、挨拶だけして別の階段で上がっていくし。うちの学校は構造上1組だけ1階にあるから、3階の2年2組は遠いのだ。


「おはよう、佐藤さん、斎ちゃん」

「おはよ、失礼してます!」

「おはよう、ございます」


 堂々と私の教室に入ってくる斎。前の席の真田さんに挨拶されて、2人で返すんだけど、こういうところでも思う。

 なんで明らかに自分より劣ってる私を選んだんだろう。

 というより、未だに信じられていない、というのが正直な気持ち。


「千里、なんか今日元気ない? ってか眠いのかぁ」

「うん、そう、眠いんだよ」


 実際それもあるっちゃある。なんといっても徹夜だし。


「ちょっと借りますよ~」


 まだ誰も来ていない、私の隣の席に声をかけて腰かけ、こっちに寄せる。

 なんとなく恥ずかしくて机の上に顔を伏せた。


「眠いよね、徹夜だもんね、愛されてるわぁ、うふふ」


 言葉を区切られるたび、はいはいといった感じに頷くけど、なんだこの余裕。斎の小さな手が、私の頭の上に乗せられる。


「でも僕も一睡もしてないからファンデの下はすごいんだよ」


 バサッ、反射的に顔を上げる。


「えへへ」


 照れたように笑っていた。

 こういうの。こういうのって反則的だ。






 僕は安里斎。2ヶ月前から、ずっと片思いしていた子と付き合っているんだけど、全く進展がありません。何度か2人でデートして、電話して、メールして。でも、友達の頃とあんまり変わらないんじゃないかなって。そりゃ、優しくて、慎重な千里のことだし、そうだろうなって思ってたけど。


「あのさ、千里」

「え、何?」


 でもね、それだけじゃなくて。


「千里って僕が可愛くて可愛くて仕方ない?」

「ぼふぉっ」


 ランチタイムに、2人のベンチで言うことにした。


「え、あ、はい。そうですね」

「それだけ、じゃない? それだけじゃない? それって恋じゃなくて愛じゃなくて萌えなんじゃない?」

「え……?」

「ごめんちょっとやっぱり、違うかなって思ったの」


 君からの愛が欲しかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ