バレンタインデー
甘々です。
友チョコ。そんなのがあるってラッキーだ。
男子にあげる本チョコって恥ずかしいけど、女子同士だったら、友チョコって言って渡せば誰にも勘違いされないし。
「リサ、はい。」
「わーい、圭ちゃんありがとー! 私からも、これ、はい!」
「やった、ありがと」
リサは、私の好きな人。――えぇ、同性ですけど?
友チョコ、と名打って毎年本チョコを渡す。
「うん、やっぱり圭ちゃんのチョコ美味しい!」
「って、もう食べたのか……じゃぁウチも食べよっと」
可愛いピンク色の紙袋に包まれていたのは、2つのドーナツだった。
「わぁ、今年はドーナツかぁ」
「うん、初挑戦なんだけど、どう?」
「……めっちゃ美味い」
出会った頃からリサの料理の腕前は天才的なものだった。それに加えて、今は部活後。美味しさが加わるというか。
「よかったぁー! あ、1個多く作っちゃったからね、圭ちゃんだけ2個なのー」
何て笑顔っ。っていうか、2個なのウチだけとか、え? 可愛すぎだろう?
「えへへー」
「あ、あははー」
今すぐ抱きしめたい。でもそしたらきっと気持ちが溢れて、言いたくなっちゃう。「好き」って。でも、そしたら、こうして笑い合えなくなるでしょ?
毎年色々頑張って作ってるのは、君だけのためなんだよ。
多く作っちゃったなんて、わざとに決まってんじゃん。
大好き。これは、唯一の本命なんだよ。
「ごちそうさまでしたー!」
「圭ちゃん早い!!」
今年も、美味しそうに食べていた。自然とこっちも頬が緩む。
「……ん? 手紙?」
「あっ!」
一世一代の賭け、もうそろそろ伝えたいと思った。
というか――今年が最後かもしれない、とも思ったから。
来年から高校生だもん。
「…………っ?」
「あ、ごめんね、気にしない……で?」
みるみるうちに赤くなっていく顔。
え、何、何この反応!?
「ごめん、その、理解できないっていうか……」
「ごめ、ごめん、ホント、気にしないでっ!」
「いやその……もしかしたら、これはその――こういう?」
顔が、ゆっくり近付いてきて、圭ちゃんの唇が私の頬に触れた。
顔を離すと、どんどん赤くなっていった。多分、私の顔もそんな感じ。
「そう、そういう……いやホント、ごめん……」
「あ、謝らないでよ! ウチ……好きでもない人に、こんなこと、できないから」
「えっ?」
「ウチも――リサが、大好き」
まさか、両思いだなんて、思いもしなかったから。
ただただ2人で、真っ赤な顔を見詰め合って。どっちからか分からないけど、今度は唇を、重ねた。