第2章:スターチャイルドの憂鬱
午後三時。
主人公はベッドに横たわりながら、タブレットをいじっていた。
月曜日の午後は、いつもより静かだった。
いや、月曜日が死んだ今となっては、これは“月曜日の亡霊”のような時間だ。
彼は、あるブログエッセイに目を留めた。
タイトルは「スターチャイルドとは何か」。
その言葉に、なぜか心が引っかかった。
スターチャイルド——星の子。
牽引者。
異質な存在。
優秀な学級委員長のような、でも孤立しがちな魂。
彼は読み進める。
チェックリストがあった。
「家庭が貧困(質素)である」
「破天荒だが優等生」
「学歴に価値を感じない」
「孤立しやすい」
「哲学を好む」
「宗教に矛盾を見出す」
「社会の不正に嫌気がさす」
「病院や化学薬品を嫌う」
「結婚を好まない」
彼は驚いた。
7割以上が当てはまっていた。
「僕は…スターチャイルドなのか?」
月曜日の午後、彼は自己暗示にかかった。
自分が特別な存在であるという妄想に、心地よく浸っていく。
リクウィッドは、彼の足元で液体のまま囁いた。
「君は星の子かもしれない。
でも、星は夜に輝く。
そして、夜明けは月曜日に始まる。」
彼は、過去の記憶を辿る。
祖先にジェロニモがいるという言い伝え。
それがホラ話だと知りながらも、どこかで信じたかった。
歴史を感じさせる人物を祖先に持ちたい——それは、月曜日のような“始まり”を欲する気持ちだった。
彼は墓参りにも行かない。
でも、ルーツには興味がある。
自分がどこから来て、どこへ向かうのか。
それを知るために、彼は“月曜日”を必要としていた。
「月曜日があるから、僕は始められる。
月曜日があるから、僕は自分を探せる。」
彼は、スターチャイルドとしての自分を肯定した。
それは、月曜日の不在を埋めるための儀式だった。
月曜日が死んだ今、彼は自分の中に“月曜日の魂”を見つけようとしていた。
リクウィッドは、彼の肩に乗った。
液体の尾が、彼の首筋を撫でる。
「君がスターチャイルドなら、月曜日は君の中にある。
さあ、次の旅へ出よう。
月曜日のカフェが、君を待っている。」
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