“聖女”
次に使おうと思ったテンプレは“聖女もの”だった。
“聖女になってモテモテ”が、定番なら、“聖女になったらモテなくなるのはどうだろう”と考えた。
……よく考えると、聖職者なので崇められることはあれど、恋愛対象としてモテるのはおかしい。ああ、権力や利用価値があれば別かもしれないが。
そんな、身も蓋もないことを考えた。長編の中にこの国の宗教は登場予定のため、概要は決まっている。無神論者の私としては、教義を詳細に詰めることはせず、「信仰とは何か?」というテーマを置き、作品を作ることにしたのだった。
結果は前回の冒頭でも書いたのだが、大爆死である。『“お飾りの妻”だけど幸せになってもいいかしら?』完結翌日から連載を開始したので、そちらの後書きにリンクを貼っておいた。そこから流れて、初回よりはいいスタートを切れるかな、と思ったのだが全然だったのである。
PVは前回より大きく落ち込んだ。初日は12、一週間もわずか17。毎日更新して、閲覧ページが増えても、全然増えない。
(どうしよう。これ以上に見られてない作品、他にないのでは?)
芽生えかけていた私の自信は急速に消失した。けれど、ただ落ち込んでいるのは性に合わない。……私の好きな言葉の一つに「狂気とは、即ち同じことを繰り返し行い、違う結果を期待すること」という言がある。違う結果のためには、やり方を変えなくてはいけない。自分の性格としても、次の作戦さえ決まれば、今は数字がなくても気持ちが落ち着くとわかっていた。
幸い、私の執筆は完結させてから全話一気に予約投稿するスタイルだ。モチベーションに関わらず、自動的に物語は進んで行く。分析に充てる時間は十分にあった。
先のPV推移から、まず考えられる問題を洗い出す。情報が少ないため、完全に特定はできない。だが、人気のある作品と読み比べるなどして、自分なりに影響度を考えてみた。可能性の大きさを★の数で示している。
1.そもそもPVが少ない
┗露出していない ★★ ……投稿時間は前回同様。あるけど別の要因ほどではない
┗タイトルの引きが弱い ★★★ ……内容を的確に表すタイトルが難しい
┗あらすじで離脱 ★ ……あらすじはかなり練ったので大丈夫そう
2. PV数が日を追って増加せず、ユニークユーザー数も低い→おそらく離脱率が高い
┗文章が読みづらい ★ ……文章はうまくないが、読みにくくはないはず
┗キャラクターの魅力が弱い ★★★ ……序盤の主人公の語りがウザい
┗冒頭の引きが弱い ★★★ ……この先話が転がっていく期待感がない
┗一話あたりの盛り上がりに欠ける ★★★ ……盛り上がりが後半に収束
3.読んでも評価やブクマにつながらない
┗今後の展開の期待感に欠ける ★★★ ……ずっとなんの話か明確に分からない状態が続く
┗テーマが文芸よりで理解しづらい ★★★ ……内面的な価値の話、読者層に合わないかも
課題のオンパレードである。
執筆中は「わあ、名作できたぞ」と自負していたのだが、冷静に見返すとこの仕上がりだ。いや、今でも自分では面白いと思っているが、その面白さを伝えるための努力が十分だったかというと、そうではなかったのだと思う。
そして、すでに連載中なので、今からこんなに多くの箇所に手を入れることは不可能だった。……あ、タイトルだけは4回ほど変えてみたのだが、泣かず飛ばずだった。
私はこれらの反省をもとに、次の作品に生かすことを決意した。そして、この時ふと湧いてきたのが「短編」を投稿してみようというアイデアだったのだ。
上位作品と読み比べた時に、とにかく目についたのは「日間ランキング」の「短編」の勢いだ。どこを見てもとにかく短編のポイント獲得ぶりはすごい。
「……どんでん返しものって一気読みしたいから、短編と相性がいいのでは?」
私のその読みは、正解だった。
そしてこの選択が——私の転機となった。
私の二作目です。
神様、あたし信じてますから。〜聖女と大司教が見つけた奇跡の話〜
https://ncode.syosetu.com/n0311ku/
今回の記事の課題と照らし合わせながら、
「失敗例の教材」として読むのも面白いかもしれません(笑)
とはいえ、今ではこの作品を好きだと言ってくださる
嬉しい感想もいただけています。
そして、次に書いた短編が——全てをひっくり返してくれました。