“お飾りの妻”
長編の校正に疲れた私は、またもやChatGPTに相談した。
「ねえ、そういえば“お飾りの妻”で短編書こうと思うんだけど、このアイデアどう思う?」
案の定、誉めそやされて、その気になった。
(よし、長編と同じ世界観で、シリーズものにしよう)
……設定厨の私は、長編を作る時に、気が狂ったように世界を構築していた。
王国建国からの歴史と年表、貴族文化と美的価値観、国教は序の口。地図まで書いて、地理条件・気候・農作物・勢力に矛盾がないか繰り返し検証したときは、さすがに自分でも“あたおか”だと薄々気づいていた。
だが、そこまでして作り上げた世界。愛着しかなかった。私が好きなジャンルは『異世界恋愛』。だったら、これでシリーズ化すればいいじゃん、と安易に思いついた。
結果として、この選択が功を奏すことになるのだが……。それはまた後日語るとしよう。
もう世界観はできているし、プロットも決まった。あとは、書くだけだ。
校正だと働かなかった私の脳は、創作となればあっという間に元気を取り戻し、その日のうちに作品が完成した。
短編のつもりだったが、思ったより長くなったことと、“仕掛け”を散りばめたこともあり、分割して八話構成にすることにした。
——自信作だ。伏線もミスリードもきいている。こんな結末を迎える“お飾りの妻”なんて見たことがない。
完結まで毎日投稿に予約をセットして、私はどきどきしながらその時を迎えた。
2025年7月15日。初投稿日。19時に投稿し——その日のPVは、なんと“20”だった。
……いや、いきなりそんなに見てもらえるとは思っていなかった。でも、想像より“0”が一つ少ない。
(え、普通はどれくらい見てもらえるものなの?)
そう思った私はネットの海に潜り、初めて知ることになる。“底辺作家”という概念を。
そうか、底辺だと読んですらもらえないのか。
正直、自分ではけっこう面白いと思っていた。……たとえそれが勘違いでも、読んでもらわなければ、それすら証明できない。
私は、ネットでノウハウを調べ、ChatGPTに相談しながら、あらすじやまえがきに「どんでん返し」を匂わせる言葉を仕込んでみた。
効果があったのかはよくわからなかった。ただ、2つほどブクマがついた。
(……いや、100ブクマ未満が底辺だとしたら2はなんだ?塵芥か?)
SNSは一応始めてみたものの、投稿してもインプレッションすらひとつもつかなくて笑った。
毎日、ほんのわずかにPVは増えていったが、おそらく単に話数が増えたからだろう。
膨らんでいた気持ちが萎んでいく。
……だが、それを救ったのは、最終日の投稿後。
いきなり、PVが今までの30倍、3000になっていたのだ。
この時の私は知らなかったが、いわゆる“完結ブースト”というやつだった。そもそも私の作風は「どんでん返し」。完結ブーストと、めちゃくちゃ相性が良かった。
初めて、ポイントがついた。リアクションもついた。感想がなかったのは寂しかったが、ランキングにも載った。
98 位 [日間]総合 - 完結済
68 位 [日間]異世界〔恋愛〕 - 完結済
これがすごいのか、すごくないのかはよくわからなかった。でも、少しでも私の話を楽しんでくれた人がいるのが嬉しくて、私は自信を取り戻した。
そして、翌日から新連載を始めた。
——この新連載が、初回冒頭以上の“大爆死”になるとも知らずに。
私の処女作です。
“お飾りの妻”だけど、幸せになってもいいかしら?
https://ncode.syosetu.com/n7538kt/
ちなみに、PV20からはじまり、ブクマも2だったこの作品。ついにブクマ100件を超え、継続的に増え続けてます。
そのお話は、またどこかで。