表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

だから私は、何度でも

作者: 呉服町

「……まただ。」


午後の授業を告げる予鈴とともに目を覚ました瞬間、全身に虚無感が広がった。青空が窓から差し込む教室で、私は静かに息を吐く。


何度目の朝だろう。


カレンダーを見なくてもわかる。今日もまた、同じ一日が始まる。


私は制服の袖を握りしめながら、少し濡れた目をこすった。そして、隣の席を見た。そこに座っているのはいつもの彼ーー蒼真そうまだった。


「おはよう、うた


彼は微笑んで私に挨拶をする。その無邪気な笑顔を見て、胸が締めつけられる。


「……おはよう、蒼真。」


私は彼の声を焼き付けるようにゆっくりと答えた。


ーーまた、彼を救わなければならない。


蒼真が死ぬ。


どんな手を尽くしても、何度やり直しても、放課後の帰り道や休校中、彼はいつも命を落とす。


彼の未来を変えたくて、何度も試した。帰る道を変えたり、遠回りを提案したり、無理にでも引き止めたりした。でも、そのたびに運命は無情に彼を連れ去っていく。


どうしても蒼真は死んでしまう。


どれだけ手を尽くしても、どれだけ言葉を尽くしても、何も変えられない。


私がどれだけあの時の感謝を伝えても、想いを伝えても、彼の運命は変わらなかった。


ーーあのとき、そう、私が彼を好きになったのは、高校入学前のことだった。


その日、私は駅前で見知らぬ男たちに絡まれていた。


怖くて、何も言えなくて、ただ立ちすくんでいた私を救ってくれたのが蒼真だった。


「怖かったよな、大丈夫か?」


彼は当たり前のように私を庇い、その優しい声で私の恐怖を溶かしてくれた。


私はその瞬間、彼に恋をした。


彼の「大丈夫」が、私を救ってくれた。


なのに、私は彼を救うことができない。


告白は何度も成功した。


「俺も詩が好きだよ。」


彼は毎回そう言ってくれた。


だけど、翌日には彼はいなくなる。


想いを伝えても意味がないのなら、私はどうすればいい?


彼を助けるためには、わたしはどうしたら…


諦めそうになったことは何度もあった。


そのたびに蒼真との思い出が駆け巡る。


ーー私は諦めない。


ーー何度でもやり直す。


ーー何度でも、何度でも


ーー彼が死なない世界にたどり着くまで。


たとえ、どれほど長くても。


たとえ、永遠に続いても。


だから私は…


「大丈夫、私は、何度でもあなたを...」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ