だから私は、何度でも
「……まただ。」
午後の授業を告げる予鈴とともに目を覚ました瞬間、全身に虚無感が広がった。青空が窓から差し込む教室で、私は静かに息を吐く。
何度目の朝だろう。
カレンダーを見なくてもわかる。今日もまた、同じ一日が始まる。
私は制服の袖を握りしめながら、少し濡れた目をこすった。そして、隣の席を見た。そこに座っているのはいつもの彼ーー蒼真だった。
「おはよう、詩」
彼は微笑んで私に挨拶をする。その無邪気な笑顔を見て、胸が締めつけられる。
「……おはよう、蒼真。」
私は彼の声を焼き付けるようにゆっくりと答えた。
ーーまた、彼を救わなければならない。
蒼真が死ぬ。
どんな手を尽くしても、何度やり直しても、放課後の帰り道や休校中、彼はいつも命を落とす。
彼の未来を変えたくて、何度も試した。帰る道を変えたり、遠回りを提案したり、無理にでも引き止めたりした。でも、そのたびに運命は無情に彼を連れ去っていく。
どうしても蒼真は死んでしまう。
どれだけ手を尽くしても、どれだけ言葉を尽くしても、何も変えられない。
私がどれだけあの時の感謝を伝えても、想いを伝えても、彼の運命は変わらなかった。
ーーあのとき、そう、私が彼を好きになったのは、高校入学前のことだった。
その日、私は駅前で見知らぬ男たちに絡まれていた。
怖くて、何も言えなくて、ただ立ちすくんでいた私を救ってくれたのが蒼真だった。
「怖かったよな、大丈夫か?」
彼は当たり前のように私を庇い、その優しい声で私の恐怖を溶かしてくれた。
私はその瞬間、彼に恋をした。
彼の「大丈夫」が、私を救ってくれた。
なのに、私は彼を救うことができない。
告白は何度も成功した。
「俺も詩が好きだよ。」
彼は毎回そう言ってくれた。
だけど、翌日には彼はいなくなる。
想いを伝えても意味がないのなら、私はどうすればいい?
彼を助けるためには、わたしはどうしたら…
諦めそうになったことは何度もあった。
そのたびに蒼真との思い出が駆け巡る。
ーー私は諦めない。
ーー何度でもやり直す。
ーー何度でも、何度でも
ーー彼が死なない世界にたどり着くまで。
たとえ、どれほど長くても。
たとえ、永遠に続いても。
だから私は…
「大丈夫、私は、何度でもあなたを...」