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白の中で

作者: 綾

 

 今年も私の出番が来た。

 毎年来る手(ごわ)い冬。小雪ちゃんが北風の寒さで凍ってしまわないように、優しくあたためるのが私の役目。

 私は白。

 私はふわふわ。

 小雪ちゃんの首にくるっと巻きついて、ふわっと優しく包み込む。



 私が暑い夏を乗り越えたタンスの引き出しを、小雪ちゃんが久しぶりに開ける。ひんやりとした両手で、私をむぎゅっと持ち上げる。

 今年も私の出番が来た。


「ママー!いってきまーす!」


 久しぶりの外。久しぶりのこの子との通学路。

 今年の冬は一段と寒い気がする。

 手の上でカイロを転がす小雪ちゃんが、そっと私に顔を(うず)める。小雪ちゃんが寒い思いをしないように、私はぎゅっと優しく抱きしめた。




 ❄︎ ❄︎ ❄︎




 ロッカーの扉が開く。

 今日も一日お疲れ様。

 この声を届けられない代わりに、私は小雪ちゃんを再び柔らかなカラダであたためる。


 小雪ちゃんがトイレの鏡を見ながら、私をキュっと整える。

 久しぶりに見る髪の短くなった小雪ちゃんは、なんだか一年前よりもかわいくなっているような気がした。




 ❄︎ ❄︎ ❄︎




 昇降口から一歩外に出ると、ツンと冷えた風が私達をすり抜けて行った。ポケットに両手を入れた小雪ちゃんが、夕焼けの中を歩き始める。


 去年の冬も小雪ちゃんと一緒に歩いた駅までの道。夕方は日が沈む寂しさも相まって、一段と寒く感じる。この子が寂しく感じないように、私はじんわりとあたため続けた。




 ❄︎ ❄︎ ❄︎




 小雪ちゃんが定期券をピッとして駅に入る。しんと静まり返っている駅は、どこか物寂しい。

 ホームに一つだけある古ぼけた木のベンチに座って、この子と2人で電車を待つ。


 耳を赤くした小雪ちゃんが、私に深く顔を(うず)める。

 心()しか、小雪ちゃんの表情が少し強ばっているような気がした。

 ドク、ドク、ドク、ドク、、、、

 心臓の音が私にまで聞こえてくる。どうしたんだろうか。

 寒いのかな?

 大丈夫かな?

 私は心配になった。


 すると、改札の方からピッと小さな音が聞こえた。ゆっくりとした足音がどんどん近づいてくる。

 そして、一人の背の高い男の子がこの子のすぐ横に座った。


「おまたせ。それ、かわいい。」

「今日から寒くなるって、天気予報で見たから。」


 この時、私は初めて気がついた。

 私が出番でない時に、いつの間にかこの子は恋をしていた。小雪ちゃんが待っていたのは、電車だけじゃなかった。

 私はとても驚いた。でもそれ以上に、とても幸せな気持ちになった。

 今年は私以外にもこの子をあたためてくれる人がいる。そう思うととてもうれしくなった。


「すごく似合ってる。」

「ありがとう。」


 そう言って小雪ちゃんは頬を赤らめて、更に深く私に顔を(うず)めた。


 二人のかわいい笑い声が、古ぼけた駅のホームに静かに響いていた。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  白視点の物語がとてもかわいらしいです。  そして小雪ちゃんの淡い恋心も  白がいつまでも小雪ちゃんを見守れれば良いのですが……。 [気になる点]  特にございません。 [一言]  拝読さ…
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