デスゲームとは……
僕は、後藤先生と別れた後で考える。
このゲームを誰がいつ始めたかは、誰も知らない。
だけど、この学校の伝統行事になっている。
まず、初めに一年生でターゲットが選ばれる。
その後、三年間ターゲットは、いじめられ続ける仕組みになっている。
理由なんて何でもいいんだ。
三田村君が、ターゲットに選ばれた理由は、何だったかな?
今でも、思い出せないぐらい些細な理由だったと思う。
入学翌日から、三田村君への【デスゲーム】は始まった。
「誰が言ったか、考えよう、考えよう♪」
その不気味な歌は、休み時間になると毎回聞こえてきた。
1学年に1人【デスゲーム】に選ばれた人がいて、二年は青柳誠さん、三年は宍戸南さん、何故か女子は【デスゲーム】には選ばれる事はなかった。
何故かって考えても、よくわからないけれど……。
ただめんどくさいからって理由なんだと思う。
それと、これは、絶対に家族にも言ってはいけないルールがある。
そうやって、我慢して耐えた先に、いったい何があるんだろうか?
学校では、給食はなくお弁当か売店と呼ばれる場所で購入する。
三田村君の、お弁当の時間は本当に悲惨だった。
「悪い、手が滑ったわ」
「ごめん、俺も」
三田村君は、何も言わずに床に落ちたお弁当を拾った。
【デスゲーム】にもルールがある。
親にバレてはいけない事と外部の人間にバレてはいけない事だ。
だから、やり方はとにかく陰湿だった。
「三田村、椅子ないのか?」
「はい」
「じゃあ、立ったまま授業だな」
「ハハハ、それうける」
学校の自分の座席は、席を離れてしまうと基本的になくなる。
「悪いな」
「邪魔だよ」
廊下や教室を歩く度に、誰かがぶつかってくる。
「死ぬに1票」
「俺も」
「しーね、しーね、しーね」
基本的には、言葉の暴力が多かった。
本当の暴力は、禁止行為だ。
痣やケガは、外部の人間にバレると困るからだ。
食べ物に何か細工をしたり変なものを食べさす事も禁じられている。
理由は、簡単だ。入院されたら困るから。
だったら、【デスゲーム】なんてやめればいいのに……。
僕は、常々そう思っていた。
見えない部分だけをうまく傷つけていくゲームなんてやめればいい。
だけど、そんな事を大きな声で言えるはずもなかった。
そして、1ヶ月に1度。
「えーと、沢村昇」
「はい」
「おめでとう」
デスゲームの順位が発表される。
1位に選ばれたものには、美浜キッチンと呼ばれる所のチキンがプレゼントされる。
「すげー」
そんなしょうもないチキンの為に、みんなはゲームをするのだ。
もちろん、学校関係者全員参加型のゲームになっている。
ターゲットの自分が死ぬか、奴等のうちの誰かが死ぬか、このゲームから逃げる方法は、その二択しかなかった。
だけど、奴等は、死ぬ事はない。
だから、基本的に自分が死ぬしか方法はないのだ。
しかし、途中で脱落すれば新しいターゲットがまた作られてしまう。
それは、【デスゲーム】の順位で最下位になった人物。
ポイント制の【デスゲーム】は、学校中にある監視カメラで校長先生がポイントをつけて各学年の先生に渡される仕組みになっている。