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第二話 魔剣と聖剣

更新遅くなりました。

やっとこさ2話目を投稿いたします。

楽しんでいただけたら幸いです。

 魔剣とは・・・・・

 即ち、魔力を帯びた剣である。

 この世界の多くの人々が思い違いをしている、聖剣が有り魔剣が有るという認識。


 実際には聖剣とは、その剣を使い「事を成した」人物、その行いが人にもたらした恩恵を以て名付けられた都合の良い名前なのである。

 その人物、所謂「勇者」が、その()()()()()を成し得た時に携えた剣、それが聖剣と呼ばれる物の正体。

 人が勝手に名付けた代物なのである。



 では、魔剣とは?


 前述したように、魔力を帯びた剣は全て魔剣であるが、世に云う魔剣には禍々しく負のイメージが付き纏っている。


 あいつはあの剣を持った途端に人を襲った、とか。

 あいつの持っている剣は人を切る度に切れ味が増した、とか。

 あいつの剣は持ち主の精気を吸って成長した、とか。

 エトセトラ・・・etc。


 要は、すごくヤバい奴が持っている、すごくヤバい剣、それが一般がイメージする魔剣なのである。

 魔の剣、なのである。

 ヤバい剣、なのである。


 では、持ち主が王との謁見中に


 キィ------------------------------------ィンッッッッ!!!!!!!!!!!!


 と音を鳴らす剣は、一般的にはどちらに当たるかと言うと・・・・・。




 ◇



「貴様っ!その剣はなんだっ!」


 王とノーツェの間に立ち塞がり、騎士は気に入らない成り立ての勇者に語彙を荒らげて問い質した。

 その立ち居振る舞いはことごとく芝居がかっているように見える。

 先程、貴殿と呼んでいた相手を一瞬で貴様呼ばわりするあたり、鬱憤が溜まっていたのだろう。

 ノーツェからしたらいい迷惑なのだが、事の発端は自分側にあるため答えないという選択肢は無い。

 それに、なぜ彼女が()()を発したのか、ノーツェには大体の予想がついていた。


「・・・いえ、ただの剣、ですよ。・・・ハイ」


 明らかに挙動不審で目が泳いでいるが、騎士はそれを何か隠し事をしている態度と受け取ったらしく憤慨していた。

 それに、なにより携えている剣が反応しているのだ、間違いない。

 この若造は()だ。

 自分にとって・・・()()()()()で。

 騎士は躊躇すること無く、スラリと腰の剣を抜き放った。


 騎士が剣を抜いたことにより、ザワついていたその場の空気が一変した。

 新米の辺境勇者の眼の前に置かれている剣ではない、国宝三剣、その内の一振りである《聖剣・エペンドット》がその刀身を露わにしたのだ、謁見の間は歓声で湧いていた。

 その様子に、騎士は満足げに頷いた。



 ◇



 案の定、彼女は反応してしまった。

 彼女は、自分以外の()が目立つのを好ましく思わない、しかも騎士は彼女のことを馬鹿にした、目の前に置かれた剣と雲泥の差だと。

 それが気に障ったのは明確で、今だって金切り声を上げて捲し立ててきてる。


『聞いてる!?ねえ、聞いてるのノーツェ!』

「聞こえてるよ、そんなキンキン声出さないでよ」

『なっ!なにがキンキン声よ!私の美声に聴き惚れなさいよ!』


 この会話は、彼ら・・・あ、王様やその周りね。には聞こえていない。

 でも、声は聞こえていないけど、彼女はその身を振動させ、音を出してアピールした。

 それがさっきのキーンと甲高い音の正体。


『ほら!また聞いてない!!』

「聞いてるよ、で・・・何?」

『だ・か・ら!抜きなさいよ!』

「・・・・・・・抜くって何を?」

()()()をよっ!!』

「や・だ・よ!大事になるだろ」

『アイツ、言うに事欠いて私を馬鹿にしたのよ!?一発ブチかましなさいよ!』

「だから、そんなことをしたら大事になるの!ただでさえ疑われてるのに、王様の前で剣なんて抜いてみなよ、それこそ敵意有りと見られて反逆罪で捕まっちゃうんだよ、絶対。あぁ嫌だ、ぼくはさっさと村に帰りたいだけなんだよ、なんだってこんな面倒なことばっかり起こるの!?絶対抜かないからね!」


「貴様!何をブツブツ言っているか!抜かねば切るぞっ!」


『だってさ、ノーツェ』


 騎士さん、何言ってくれちゃうの。

 彼女のニヤァっとした顔が目に浮かぶよ。


 ◇


 ノーツェはチラリと王に目をやる。

 視線の先の王は静観・・・と、言うかこの状況を楽しんでいるように見えた。

 流石は一国の王、このくらいじゃ動じないか。そうノーツェは判断し、諦めた。


「・・・先に言っておきますけど、抜けと仰ったのは騎士様の方で、私から率先して抜いた訳では無いって事で良いでしょうか?」

「何をゴチャゴチャと。男子たるもの、相手が剣を抜いたら剣を抜いて対峙する、当たり前ではないか。・・・それとも貴様の村では抜かれたら土下座して許しを請うのが当たり前なのかな?それならば、それで構わぬが」


 嘲るように騎士は顔を歪めたが、ノーツェの目には入っていない。


 ノーツェは温厚な人間だ、まぁ保身に走る傾向はあるが。

 揉め事は好まないし、出来得る限り対話にて事を解決したい。

 今だってそうだ、彼女を()()事で起こる事態を極力回避したい。

 自分に降りかかる火の粉は全力で避けたいし避けまくりたい、何なら火元になりそうなものを発見次第消火したい。


 でもダメな事がある。

 それは、自分が生まれ、育まれ、守っている村を馬鹿にされること。

 これは、ダメだ。


()()()()()()()()()、抜いて良いんですね。えぇ、()()の村でもそうですよ。最も相手の話を頭ごなしにして、人の話を聞かない人なんてボクの村には居ないんで必要ないんですが」


 柄に手をかけ、ノーツェは言った。


「後悔しないでくださいね」



 ◇



王都の酒場、そこでは王宮勤めをしている者は引く手数多である。

ましてや秘匿された内容を酒の勢いでベラベラしゃべる者は面白がられ重宝される。

その日も自らの詩に限界を感じていた吟遊詩人が、王宮勤めの下っ端騎士に酒を奢って話を聞き出そうとしていた。


 え?あの時のことですか?

 ノーツェ様とデイトーミオ様の王前決闘。

 そうですよ?《王前決闘》、今じゃそう言われてます。

 凄かったですよねぇ、あんなの見たのは初めてでした。

 って、この話はしたらマズいんですよ。

 ・・・え?もう一杯?良いんですか?ゴチになります。


 ノーツェ様の前に聖剣が置かれて、デイトーミオ様のいつもの演説があって。

 そうなんですよ、いつもあんな感じです。

 なんて言うか、デイトーミオ様って目立ちたがりじゃないですか、いつも芝居がかってて。

 ・・・って、この話言わないでくださいよ!?バレたら身の危険が!

 あぁ、大丈夫?この場の話は無いものとして記録される?

 なら安心・・・って、無いけど記録はされるんですね。

 ・・・まぁ、良いか、あ、店員さんエールもう一杯。


 ん?あの、剣がキーンと鳴った辺りから?了解です。

 剣がキーンと鳴って、それに反応したデイトーミオ様が、こう、バッと手を広げて王とノーツェ様の前に立ち塞がったんですよ、お芝居みたいに。

 え?その内、怒られるぞ?良いんですよ、ここでの話は無いものなんでしょ?言っちゃいますよ、って言うか言わせてください。

 そうですよ、鬱憤溜まってるんですよ。

 大体、なにが『騎士たるもの、己が身体を剣とし盾とし王にお使えするのが天命であると心得よ』ですか、言ってること立派ですけど、なんか嘘くさいんですよ。

 あの時もなんか自分に酔ってる感じしましたけどね『王の前に身を投げだした自分、格好良い!』って感じアリアリで。

 実際、剣を抜いた時もやりすぎだって空気だったんですよ、俺らは。

 だって聖剣ですよ?聖剣。そんな簡単に抜いちゃダメだろって、正直引きました。

 でも、なんていうか()()()()、達は盛り上がっちゃって。

 なんで、つい俺等も『おぉぉっ!!!!!』って感じ出さなきゃって、下っ端ですから、まあ忖度ですね。


 で、剣を抜いたデイトーミオ様がまた余計なこと言って、俺でも怒りますよ生まれ故郷を馬鹿にされたら。

 でも、あの人は貴族なんで。

 そうそう。生まれも育ちも王都、生粋の王都人ですから、その辺分かってないんでしょうね。


 話し戻して?あ、はいはい。

 で、村を馬鹿にされたノーツェ様は、こう。


『後悔しないでくださいね』キリッ!


 って、そうそうモノマネです。似てるでしょ?

 イマイチ?いやいや、今、結構酒入ってるからですよ、これやるとウケ良いんですから。


 で・・・・『後悔しないでくださいね』キリリッ!!


 やっぱりイマイチ?おかしいなぁ?

 まあ良いか、そう言って剣の柄に手をかけたんですけどね。

 普通、剣を抜く時って・・こう、シュッっと言うか、スパッと言うか。

 え?スパッは切るときだ?良いじゃないですか、感覚ですよ、感覚。

 こう、すんなり抜ける感じするでしょ?

 でもね、ノーツェ様が剣を抜くときって違ったんですよ。

 なんていうか・・・・引っ張り出す?

 俺からしたら、こう。圧倒的な()()を引っ張り出す?引きずり出す?

 そんな感じがして、ゾワッとしたのを覚えてます。

 今だって話てたら思い出しちゃって、ほら見てくださいよ。


 鳥肌立ってんのわかるでしょ?


 見せなくて良い?ハハハ、すんません。

 でもね、ここからなんですよ《王前決闘》のヤバさ。

 それこそ、箝口令が敷かれた、本当の意味が分かるのは。



 ◇



 眼の前の新米辺境勇者から溢れ出す気に、デイトーミオは圧倒されかけていた。

 だが彼が握る聖剣から力が流れ込みかろうじて踏み止まる。

 他者からはその地位の割に軽く見られがちな彼ではあるが、その力は本物、一流の戦士である。

 その彼をして圧倒させるほどの気を放つ少年。

 ノーツェがその力の一端を顕現させようとしていた。


 柄に手をかけたノーツェは、その剣を・・・と言うより、その力を抜き放とうとしていた。

 それは言うなれば濁流。

 細く長い筒状の鞘に押し込まれていた濁流が、()()が謁見の間に姿を表す。


 彼女は比べられる事を嫌う。

 彼女は侮辱されることを嫌う。

 そして

 彼女は、()()()()()()()()()()()


 抜き放たれた濁流は神々しいまでの光を放つ一本のショートソード。

 その名は《魔剣・ジュマ・ゴート》



『んんんんんんーーーーーーーーっ!!ハァイっ!!注目しなさぁぁぁいっ!!!』



 彼女の声はノーツェにしか聞こえていない。


ノーツェの相棒《魔剣・ジュマ・ゴート》登場です。

ここから先も頑張って書きますので、応援やコメントいただけると嬉しいです⸜(*ˊᗜˋ*)⸝

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