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今日は表情が豊か。

「怒った顔!」

「うわー、とりさんごめんなさーい。怒らないでー」

「あはははは」

「うふふふふ」

 ああ。今日も化繊のけものたちがうるさい。

「じゃあ次はぼくね。えーと……困った顔!」

「どうしたんだ、ねこくん。困ってるのならぼくに相談したまえ」

「からの、強気な顔!」

「うわー、ねこくんが凛々しい!!」

「あはははは」

「うふふふふ」

 ほんとにうるさい。

 私はテレビのボリュームを上げながら、ちらりとふたりを見る。

「ねえ。それもう捨ててよー」

 と言ってみるが。

「困った顔!」

「ぼくは普通の顔!」

「あはははは」

「うふふふふ」

 だめだ。聞いちゃいない。

 化繊のけものふたつが何をしているのかというと。

 今日の朝、少し寝坊したので急いでごはんにふりかけをかけて食べたんだけど、そのときにちょっとだけふりかけをテーブルにこぼしてしまった。

 こぼしたのは少しだけだったし、もう時間もなかったので、掃除は帰ってからにしようと思って、そのまま出勤したのだけれど。

 帰ってきたら、とりとねこにマンガみたいな黒い眉毛が生えていた。

 まあよく見たら、ふりかけの刻みのりだったんだけど。

 それを目の上に貼り付けてふたりで遊んでいるのだ。

 まったく。何でも遊びに結び付けるんだから。

 それにしても眉毛って不思議だなあ、としみじみ思ってしまう。

 間抜けなぽやんとした顔のふたりなのに、目の上に乗せた刻みのりをハの字や逆ハの字にするだけで、本当に怒ったり困ったりしているように見える。

「きりっ」

「かっこいい!」

「ふにゃ」

「かわいそう!」

「横目!」

「きゃー、のぞかれてるー」

 とりが、のりをちょうど目の端に来るように貼っている。そうすると確かにジト目で横を見ているように見える。

「あははははは」

「うふふふふふ」

 楽しそうなのはいいけど。うるさい。

「もういいでしょ、その辺で」

「マキよ、眉毛にもういいとかそのへんとかはないのだよ」

「のだよ」

 ふたりはふこりと手を上げて私を牽制すると、眉毛をぴこぴこと動かす。むかつく。

「半分怒って半分困った顔!」

「わー、どっちの気持ちなんだー」

「あはははは」

「うふふふふ」

 ええい、仕方ない。

 私はハンディクリーナーを持ち出して、スイッチを入れた。

 ごー。

「ああっ、眉毛が!」

「吸い込まれていく!」

 刻みのりを失っていつもの間抜けなぽやん顔に戻ったふたりは、しばらく残念そうにしていたが、すぐにきれいさっぱり忘れて遊び出した。

「ねこくん、ビー玉でボーリングをやろう」

「わーい。ぼく、ピン立てるー」

「違う違う。ねこくん、ボーリングっていうのは地面を掘ることをいうんだよ」

「そうなんだー」

「では、開始」

「あいあいさー」

 ごんごんごん。

 黄色いヘルメット(に見えるけどガチャガチャのカプセル)をかぶって工事ごっこを始めるふたり。

「ちょっと、下に響くからやめて」

「いや、石油か温泉が出るまで掘ろうかと」

「掘ろうかと!」

「うちからは何も出ません。下の家から苦情が出ます」

「えー」

「えー」

 これなら眉毛ごっこの方がましだ。

 しょうがない。今度、黒い布か何かで眉毛を作ってあげよう。




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― 新着の感想 ―
[一言] 海苔ってとってもバカ殿眉毛ぽくて良いですよねー♡
[良い点] はー♡ なんて癒やされる……。 とりとねこのやり取り、そしてのーんびりしたマキのつっこみと、つっこみながらゆるゆると流されていく。 そんな彼らのふんわりとした日常の様子に心温まって、彼ら…
[良い点] とりさんとねこくんが最強装備(眉毛)を手に入れた! フェルトを買ってくるマキちゃん、優しいです。手芸屋さんがある街は住みやすそうですね。 魔法使いみたいな誰かが、きっと手を動かしています。…
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