表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

58/68

今日はひそひそ話をしている。

 

 久しぶりの休日。

 遮光カーテンの隙間から、明るい朝の日差しが部屋の中まで漏れてきている。

 梅雨という季節柄、ここのところ毎日朝から雨ばかり降っていたから、こういう晴れた朝はすごく久しぶりだ。

 しかもこんないい天気の日に、お休みだなんて。

 最高だ。神様、ありがとう。

 もう少し寝よう。

 うふふ。

 私がベッドでもそりと寝返りを打つと、テーブルの方からとりとねこのひそひそ声が聞こえてきた。

「ねえ、とりさん。マキ、起きてこないけどいいのかな。明日はやっと晴れるみたいだから溜まった洗濯物を朝からずんどこ干すんだって、昨日の夜張り切ってた気がしたけど」

「ふふふ。起きなくていいわけはないよ、ねこくん。どうせマキは昼前くらいの、おしゃれな言い方をすればブランチくらいの時間にのそのそと起きてきて、テレビを見ながらスマホをいじって、買い物でも行こうかなー、などと能天気なことを考えながらもそもそとパンなど齧ったあたりで思い出すのさ。あ、今日は朝から洗濯物を干さなきゃいけないんじゃなかったっけ、と」

「うわー、もったいない。それじゃせっかくのいい天気のお休みが台無しだね」

「うむ。そこから慌てて洗濯して、昼前に干し終えて、午後三時くらいにもう乾いたんじゃないかと一縷の望みをかけて厚手のスカートとかに触ってみるんだが、明らかに湿っていることが分かってがっくりくるんだよ。ほんとは午後からもう一回洗濯機回したかったのに、と」

「そして、ほとんどの洗濯ものは洗われないままで次のチャンスを待つんだね」

「ああ。マキもどうせすぐに諦めて夕方くらいに少しは出かけるだろうからな」

「じゃあほんとうは今すぐ起きた方がいいんだねえ」

「うむ。今起きれば充実した休日が約束されているだろうねえ」

「そうなんだねえ」

「そうなんだよ」

「そっかー」

「そうそう」

 ……。

 ………。

 …………。

「……ねえ」

 私はベッドに寝たままでふたりに声を掛けた。

「どうしてそこまで分かってて、起こしてくれないの」

「なんだマキ。起きてたのか」

 とりがふこりとこっちを向く。

「盗み聞きなんて、趣味が悪いぞ」

「そうだぞ、ふくのしゅみが悪いぞー」

「ふ、服の趣味は今関係ないでしょ」

 適当なことを言うねこに反論してから、私はベッドの上でごろんと仰向けになる。

「ああ、もう。そうだよね、今日は洗濯しなきゃいけないんだ。ほんと、分かってるなら起こしてくれればいいのに」

「ぬいぐるみに何を期待してるんだ」

 とりが呆れたようにため息をつく。

「デートで遅刻して、ごめんなさい、今朝はぬいぐるみが起こしてくれなかったから寝坊しちゃった、とか言ったらサワダさんに引かれるぞ」

「そんなこと言ったらサワダさん引くね」

 ねこもふこふこと頷く。

「引けるところぎりぎりいっぱいまで引くと思う」

「ああ、もう。分かりましたっ」

 身体を起こして、窓のカーテンをしゃっと開けると朝の太陽がいっぺんに部屋に入ってきた。

 ああ、爽やか。

 太陽、久しぶり。

「あ、まぶしい!」

「灰に、灰になるっ」

 まともに直射日光を浴びたとりとねこが、きゃあきゃあ言いながら日陰に逃げていく。

 吸血鬼か。

 さ、それじゃあ始めますか。

 私は大きく伸びをして、ベッドを下りた。





とり「作者の最新の活動報告で、7/25発売のアルマーク第三巻の表紙が公開されているので、ぜひ見ていってくれたまえ」

ねこ「たまえ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 平和だ。なんとも平和だ。 とりとねこのいる生活、本当に癒されるぅ! いや、うんうん。でもさ、マキの気持ちも分かってあげて~! 大人になるとさ、ダラダラできる時間ってなくなっちゃうんだよ~…
[一言] 今日はまさにそんなお天気で、洗濯物二回戦をまだしていなかったわたしにはグサグサくる話でした。 うちにもとりとねこ、来てくれないかなー(チラッ
2023/07/02 12:49 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ