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今日は年が変わったことに気付く。

 テレビの音がうるさくて、目が覚めた。

「うふふふふ。絶対それを言うと思ったよ」

「とりさん、あの顔見てよ。あはははは」

 テレビの前に置いたビーズクッションの上で、とりとねこが楽しそうに笑っている。

 今日は元旦。

 昨日の大晦日の夜、サワダさんと会った私は、食事をしてちょっとお酒を飲んだ後で、二人で大きな神社に初詣に行った。

 寒かったけど、たくさん人がいて、みんなで何をするでもなく年越しの時間を待っていて。

 一年に一度だけの特別な雰囲気。

 私が寒そうにしていたら、サワダさんがそっと私の手を握って自分のコートのポケットに入れてくれた。あったかかったし、嬉しかった。

 神社の境内で、サワダさんと小声でカウントダウンした後で、「あけましておめでとうございます」って言い合って、それからお参りをして。おみくじを引いて。

 サワダさんとお別れしてから、年末臨時ダイヤで運行している電車で帰ってきた。

 家に着いたのはまだ初日の出なんてかけらもない真夜中で、とりとねこはいつも通り静かに寝ていたので、私もなるべく起こさないようにシャワーを浴びてベッドに入ったんだけど。

 賑やかなテレビの音とふたりの笑い声で起こされた。

 枕元のスマホを見ると、午前9時。

 今年最初の太陽はとっくに高く昇っている。もうちょっと寝たい。

「あはははは」

「うふふふふ」

 ふたりは大好きなお笑い番組を見て、ずっと楽しそうに笑っている。寝たいけど、それがすごくうるさい。

 お正月のお笑い番組って、ちゃんとしたネタを見せるところ以外は結構グダグダなのに。笑いの沸点の低いけものだなあ、もう。

 仕方なくもぞもぞとベッドから這い出すと、ふたりが、お?と振り返った。

「起きたかマキ。朝帰りせし者よ」

「せし者よー」

「朝帰りじゃありません。まだ夜でしたー」

 そう言い返してとりとねこを見ると、クッションの上におちょこまで用意している。

 かすみ(空気中にふよふよと浮いている謎物質らしい)で一杯やっていたみたいだ。

「朝から飲んでるの」

「なんだか分からないが、今日はかすみがフレッシュだぞ」

 と、とり。

「そうそう。かすみがちょっとアップデートされてる感じー」

 と、ねこ。

「あー、そうなの? 新年だからかなぁ」

 適当に答えると、ふたりはふこりと顔を見合わせる。

「新年?」

「うん、今日は元旦だから。今日から新しい年だよ」

「なるほど、そういうことか」

 とりがふこりと手羽を打つ。

「早朝からお笑い番組をぶっ続けでやってるから、今日はすごくいい日だと思っていたが。そうか、年が変わったのか」

「だからかすみが新鮮なんだねー」

 ねこもふこふこと頷く。

「昨日までのかすみはだいぶくたびれてたから」

 そういうものなのか。

「てれれってれー」

「わあ」

 急に大声をあげるのはやめてほしい。びっくりするから。

 新年早々、とりのレベルが上がったらしい。年が変わったことに気付いたからだろうか。

 かといってふたりとも何をどうするでもなく、またテレビを見て笑い始める。

 レベルって何なんだろう。

「あけましておめでとう」

 一応ふたりの背中にそう声を掛けると、テレビを見たまま振り返りもしないで、しっぽだけぴこぴこと動かして返事をする。

「おめでとー」

「でとー。あ、落ちる落ちる」

「押すぞ押すぞ。あー、押したー」

「落ちたー」

「あはははは」

「うふふふふ」

 定番の展開で大爆笑している。

 お正月らしいゆるさで何より。

 いや、このふたりはお正月に限らず毎日ゆるいけど。

 スマホに、サワダさんからのメッセージが来ている。返信しよう。

 私はスマホを手に取って、もう一度ベッドに寝転がる。




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― 新着の感想 ―
[一言] 明けましておめでとうございます。本年がやまだ様にとりまして良い一年になりますように。 サワダさん、送り狼にならない辺り紳士ですね。 そしてとりとねこ…!!! 干支の存在に気がつかなくて良か…
2023/01/01 22:31 退会済み
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