今日は体重を量っている。
「あー!」
今日もとりの声がうるさい。
「やせちゃった! またやせちゃった!」
「ほんとだ!」
ねこも両腕をぴこりと伸ばして驚いている。
「とりさんがやせちゃった!」
うるさいなあ。
痩せるという言葉には今ちょっと敏感なんだぞ、私は。
軽々しく使うんじゃない。
ふたりがふこふこと騒いでいるほうに目を向けると、とりがいつものように台所でキッチンスケールの上に載っている。
体重を量る時は、いつもあれを使う。
軽すぎて、体重計には全く反応しないから。
羨ましい。
「ほら、マキ! 見て!」
「みて! その両のまなこで!」
「はいはい」
仕方ないので数字を確認してあげる。
98グラム。
「98グラムだね」
「ほんとは100グラムなのに! やせちゃった!」
「まあいろんなところを歩き回ってるし、洗濯したりもしてるから、多少はねえ」
「消えちゃうの!? ぼく、このままじゃそのうち消えちゃうの!?」
とりが悲痛な声で叫び、よよよと泣き崩れる。
「とりさーん!」
ねこが駆け寄ってとりに抱き着くと、キッチンスケールの数字が126に変わる。
ねこの体重は変わってないな。
とりはおしりのへんにビーズが入ってるから少し重いんだよね。
「ううう、このペースで行くと、三年後くらいには僕は消滅してしまう」
「そんな―! とりさんが消滅したらぼくはどうやって生きていけばいいの!」
「強く生きるんだ、ねこくん。ぼくはいつも君の手羽の下にいるよ」
「ぼく、手羽ないよー!」
スケールの上でまたやってる。
二人がぴこぴこ動くから、スケールの数字もちょこちょこ動く。
「マキー! どうすればいいんだー!」
「いいんだー!」
「はいはい」
私はねこをひょいっと摘まみ上げてスケールから降ろす。
「とりさんはじっとしててね」
言いつけ通り、とりがふこりと動きを止める。
スケールの数字も98で止まる。
「えいっ」
「むぎゅ」
とりの頭を上から軽く押してやった。一瞬数字が790とかになる。
私がさっと手を離すと、数字は99になっていた。
「あー! とりさん、99にもどったよー!」
ねこの声に、とりは両手羽を広げる。
「マキ、もう一回!」
「いいけど」
もどるかなあ。
「えいっ」
「むぎゅ」
もう一度押すと、数字は一瞬100を表示した後で、99に戻った。
「ここが限界かな」
「でも99に戻った!」
「もどった!」
大喜びで下りていく二人。ふこふことハイタッチしている。
まあ、1グラムとか誤差の範囲だからな……こうやると変わるんだ。昔買った安いスケールだし。
私はスケールの電源を落として引き出しにしまった。




