今日はあれを片付けました。
実は、こたつを片付けました。
春までは、急に寒くなることもあるから、と自分に言い訳して片付けるのをずるずると延ばしていたのだけど、もう完全に無理だという気温になった。
それで、すごくめんどくさかったけど、こたつ布団をまとめて近所のランドリーに持っていって、丸洗いして乾燥機にかけてから、持ち帰ってきた。
こたつを何よりも愛していたとりとねこは、こたつがただのテーブルになってしまったことをいたく悲しんで、しばらくはこたつ布団の上をころころしながら別れを惜しんでいたけど、ようやく諦めたようなので、収納にしまい込んだ。
ふう。
何だかさわやかな気分。
やらなきゃいけないことを忙しさにかまけてずるずると引き延ばしていると、ずっとそれが頭に残っていてもやもやするんだけど、思い切って手を付けると意外とそれほどのことでもなくて、そしてやり終えるとやっぱりすっきりする。
こたつ布団がなくなって、なんだか広くなった部屋で足を伸ばして、ちょっと満足感に浸る。
ふふふ。何か飲もうかな。
「あらー、こんなに見晴らしがよくなっちゃって」
私の横で声がした。
とりがテーブルの下で、反対側に向かってふこふこと手羽を振っていた。
「とりさーん」
反対側の床ではねこが腕をぴこぴこと振っている。
あ、そうか。この人たちが喋りはじめたのはつい最近だから、こたつのない生活を知らないのか。
「スケルトンだねー」
「うん、スケルトンー」
二人が嬉しそうに言い合っている。いや、こたつ布団のないテーブルをスケルトンとは言わないと思うけど。
「あ、いいこと思いついた」
とりが手羽をふこりと叩く。
絶対しょうもないことだ。
「せっかくスケルトンになったところで、このテーブルの下をとり帝国の領土にしようと思うんだけど」
ほら、しょうもなかった。
「だめです」
私が睨むと、とりはさささっとテーブルの脚に隠れた。まあ身体の半分以上はみ出してるんだけど。
「季節が変わるんだねー」
ねこが言った。
「もう春になるのー?」
うん。ごめん、ねこくん。
「夏になるんだよ」
いや、正確には、もうなったっていうか……。
「夏なの? じゃあ春は?」
不思議そうに首を傾げるねこ。
うう。ちょっと目を合わせられない。
「ねこくん、最近は日本も亜熱帯化が進んでるからね」
とりがテーブルの脚から顔を出して分かったようなことを言った。
「春とか秋は、あってないようなものなのさ」
とりの言葉に、ねこはすぐに納得した。
「なるほどー。あねったいかだねー」
そういうことじゃないけど、そういうことにしておこう。
私は、レモネードでも飲もうと立ち上がる。