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26/68

今日は仕送りが来た。

 実家の母から仕送りが来た。

 さっきまで「あはははは」「うふふふふ」と笑いながら楽しそうに床を転がりまわっていたとりとねこは、宅配の人が来ると、魂が抜けたみたいにものいわぬぬいぐるみに戻った。

 変な体勢でごろりと転がる二個のぬいぐるみ。

 ちょっと、やめてよね。私が床に放り投げたみたいになってるじゃん。

 なるべく部屋の中が見えないような姿勢で、宅配のお兄さんからダンボールを受け取る。

「ご苦労様でーす」

 そう言って、ドアを閉めると、ダンボールを床に置いた。

 結構重いな。

 そこに、ふここここ、と軽やかにとりとねこが駆け寄ってきた。

「なに、なにー? なにがきたのー?」

「本社からの支給品だよ、ねこくん」

「その本社っていうのやめなさい」

 私はダンボールを持ち上げて、部屋に戻る。

 後ろからとりとねこもきゃっきゃとはしゃぎながらついてくる。

「……さて」

 何が入ってるかな。

 部屋の真ん中に箱を置き、ガムテープをべりべりと剥がす。

「ありゃ」

 雑に剝がしたせいで、ダンボールの表面もずいぶんと一緒に剥がれてしまった。

 この箱はもう使えそうにない。

「わーい」

 さっそくねこが、剥がしたガムテに絡まって遊び始めた。

「ねこくん、ガムテープがくっついたら生地が剝げちゃうよ」

「大丈夫、これもうべたべたしてないから」

 ねこはそう言いながら、身体にガムテを巻いて転げまわっている。

 まあダンボールと一緒に剥がしちゃったから、大丈夫かな。

「ふふふ、ねこくんはまだまだだなぁ」

 ダンボールのまん前に陣取ってどかないとりは、ふこりと手羽をくちばしの下に持っていく。

「この箱の中の方が、面白いものがいろいろと入ってるのさ」

「うん。邪魔だからちょっとどいてください」

 両手でとりをどかしてから、箱を開ける。

 重かったから、きっと、と思っていたけどやっぱりお米だった。

 お米は買って帰るの大変だから、助かる。

 それと野菜がちょっとと、おかずになりそうな缶詰とか瓶詰とかが少々。

「ああ、なつかしいねえ」

 とりが箱を覗き込んで、ふむふむと頷く。

「向こうには、こういう野菜がいっぱいあったんだよ」

「とりさん、覚えてるの?」

「覚えてるさ」

 とりはちょっと得意げに言う。

「まあ言うならば僕の生まれ故郷だからね、あそこは」

「……へえ」

 とりのお尻のところからぴこりと出ている「made in China」のタグを見ながら、私は頷いた。

 さあ、母にお礼の電話をしよう。





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― 新着の感想 ―
[気になる点] とりさんに魂が宿ったのは実は実家??? [一言] こんなローファンタジーならウェルカム。 そして実家からの支援物資って嬉しいものですよね。 日本のお菓子と缶詰は美味しすぎる。
2022/08/13 12:49 退会済み
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