今日はクイズを出してみる。
大福を買ってきました。
ふふふ。
たまに、発作的にどうしようもなくあんこが食べたくなるときがある。
そうなると、私の中のご先祖様の遺伝子みたいなのが私を駆り立てるのだ。
和菓子、和菓子。和菓子を食えと。
たいていはそれで、手っ取り早くコンビニに駆け込む。
コンビニには必ずあんこがある。
どらやきだったり、もなかだったり、水ようかんだったり。
今日は、それが大福なのです。
ご機嫌で帰って来て、テーブルのお皿の上に大福を置いてから、コーヒーを淹れに行く。
淹れるっていってもまあ、インスタントの粉末をお湯で溶くだけなんだけど。
マグカップを手に鼻歌を歌いながら帰ってきたら、お皿の上の大福の横で、ねこが丸まっていた。
「……え?」
意味が分からなくて、マグカップを持ったまま立ちつくすと、脇から「じゃじゃあん」とか言いながらとりが出てきた。
「はい、ここで恒例の大福クーイズ!」
「恒例の?」
恒例って言葉の意味が分かって言っているんだろうか。
大福クイズなんて今まで一度もやったことがない。多分、テレビで音で聞いただけの言葉を、ノリで適当に使っているんだろう。
「ええと、何?」
結構冷たい声が出てしまったが、とりは全然気にしない。
楽しそうにふこふこと手羽を振って、大福とその隣で丸まったねこを示す。
「この二つの大福。なんと、どちらかが本物で、もう一つは偽物です。さあ、どちらが本物の大福でしょうか!」
「……」
とりの目はまじだった(ビーズだけど)。
えぇー。
確かにねこは三毛柄なので、白地が圧倒的に多い。
だけど、だからといって本物の大福の隣に丸まった白っぽいぬいぐるみが並んで、それで騙される人間がいるだろうか。
え、これどうしたらいいんだろう。普通に大福食べていいのかな。
正解は何? それを考えるのがクイズってこと?
意味不明な問題過ぎて、混乱してきた。
とりあえずマグカップをテーブルに置き、とりを見る。
とりは左右の手羽をぴこぴこ振りながら、「じゃかじゃかじゃかじゃか」とか言っている。シンキングタイムらしい。
ねこは一生懸命丸まっているが、ときどきふこりと動く。
うん、クオリティがひどい。
「えっと」
私はためらいがちに手を伸ばした。
「じゃあ……こっち」
試しにねこを掴み上げてみた。
「おっと、二番の大福を選んだー!」
あ、こっちは二番なんだ。それも初耳だけど。
仮に目隠しされていたとしても、手触りで完全に大福ではないことが分かるのだが、とりはまだ正解発表をしない。
わくわくしながらこちらを見上げている。
えーと。
「い、いただきまーす」
とりあえず口元に近づけてみた。
とりはまだ正解を言わない。
「あーん」
口を開けてみる。
「ぶっぶー! はずれです!」
「きゃああああ」
とりが不正解を告げると同時に、ねこが悲鳴を上げた。
「マキが! 僕を本当に食べようとしてる!」
ねこは大慌てで私の手から逃れてテーブルの下に駆け込んでいく。
「それは実はねこくんでした! 食べられませーん!」
「あ、うん」
とりの嬉しそうなこと。
とりとねこはテーブルの下に潜って、「あぶなかったね」「すっかりだまされてたね」とか楽しそうに話し合っている。
えっと、もう食べてもいいのかな。
私は腰を下ろして、大福を前に手を合わせてから、コーヒーを一口すすった。