今日は掃除機と戦っている。
今日は、部屋の掃除をする日だ。
ずぼらな私は、この日に掃除をすると前もって決めておかないと、こまめに掃除をすることがない。
その結果、部屋が際限なく荒れていってしまうということを、学生時代に苦い経験として学んでいた。
「今日は掃除するよ」
「えー」
クッションの上でくつろいでいたとりは、めんどくさそうに短いしっぽをぱたぱたと振る。
「どうして今日やるのー。明日でいいよー」
「明日は私、仕事でしょ。それともとりさんが代わりにやってくれるの?」
「やらないー」
ぶつぶつ言いながら、とりがクッションから下りる。
「もー。早くしてよー」
「はいはい」
掃除機を出してかけ始めると、とりはどこからともなく出てきたねこと二人で後ろについて回ってくる。
何をしてるのかと思ったら、掃除機の風に吹かれて遊んでいる。
「ちょっと二人とも、危ないよ」
「かぜがー。すごいー」
「とばされるー」
「あはははは」
「うふふふふふ」
楽しそうに笑いながら、風に吹かれて転んだりしている。
まあ、楽しそうだからいいや。
カーペットをどかし、クッションをどかし、隅々まで掃除機をかける。
この一週間で溜まった埃や髪の毛。全部吸い込んでしまえ。
「あはははは」
とりが掃除機のすぐ前を横切る。
「ちょっと、本当に危ない」
「うふふふふ」
ねこも同じところを横切る。と思ったら、とりがまた前に出てきた。
掃除機ぎりぎりのところまで近付いて、それからダッシュで逃げていく。
どうやら度胸試しを始めたらしい。
「どうなっても知らないからねー」
もういい。気にせず掃除機をかける。
案の定、何度目かのチャレンジでねこが転んだ。
「あっ」
そこに私の掃除機が迫る。
「ねこくーん!」
「とりさーん!」
ねこがとりに手を伸ばす。
ぐに。
ずもももも。
「ああー--」
もちろんサイズ的に吸い込まれるわけではないので、ちょっとぐにょんとするだけだ。
「ほらー。だから言ったじゃん」
「とりさーん」
「ねこくーん」
解放されたねこは、とりのところによれよれと駆けよって、二人で抱き合っている。
「くそう、掃除機め」
そう言いながら、とりが掃除機の前に身体を投げ出した。
「やるならぼくをやれー」
そう言いながらも、その声に楽しそうな響きがある。
こいつ、ねこのを見てちょっと楽しそうだと思っただろ。
仕方ない。
とりの腹に掃除機を当ててやる。
ずもももも。
「ああー--」
とりの嬉しそうな声が部屋に響いた。




