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家にいる鳥と猫のぬいぐるみが動いて喋るだけの話。  作者: やまだのぼる@アルマーク4巻9/25発売!
第一部

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11/68

今日はなんだか優しい。

 はあ、とため息をつく。

 気が重い。

 別にいつもだって、やったぜ今日も楽しみだ、なんて思いながら仕事に行くわけではないが、それにしたって今日は気が重い。

 完全に自分のミスによって周囲に迷惑をかけてしまった。

 そのせいで昨日も遅くまで会社に残ったが、続きは今日また改めて、ということになって帰された。

 うるさ型の上司が昨日たまたま不在だったこともあって、本格的なお説教は今日これから。

 やってしまったことは仕方ないので、説教だって甘んじて受けるけれど、でもやっぱりそのことを考えるとお腹の下の方が、ずん、と重くなって、食欲もなくなる。

「どうした、マキ」

 最近お気に入りの、朝日の差し込む窓辺で日向ぼっこをしていたとりが、私の今朝何度目かのため息に振り返る。

「元気ないな」

「まあね」

 とりに話しても仕方ないのだけど、誰かに聞いてほしくて話してしまう。

「昨日ミスしちゃったから、今日怒られなきゃいけないの」

「あー、昨日遅かったもんな」

 とりはふこふこと頷く。

「仕事たいへんだな、マキ」

「うん。大変なの」

「辞めてもいいんだぞ」

「辞めたらどうやって食べてくのよ」

「かすみはタダだぞ」

「私はかすみじゃ生きていけません」

「そっかー」

 とりは、ふむ、と考えてくちばしの下に手羽を持っていく。

「人間は不便だのう」

「人間に作られたくせに何言ってんの」

「まあしっかりと怒られてきなよ」

 とりはそう言って、また窓の方にふこりと向き直る。

「帰ってきたら、たくさん慰めてあげるから」

 うそつけ。

 帰ってきたら大体ねこと一緒に遊んでて、私のこととか忘れてるくせに。

 そう思ったけど、なんだかとりの優しい言葉が嬉しかった。

「ありがとう」

「ましてー」

 雑にとりが返事する。それも力が抜けるきっかけになった。

「いい天気ー」

 そう言いながら、ねこが窓辺によじ登ってきた。

「ぜったい今日、いいことあるよ。こんないい天気だもん」

 目をキラキラさせて(……るように見えた)ねこが言う。

「そうかもね」

 そう答えて、私は顔を洗うために立ち上がった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] うううう……! こんなこと言ってくれる存在がいれば、よーうし、いっちょ怒られてこよ!って、憂鬱ながらも気合いが入りますね! いいなぁいいなぁ。 自分のミスで迷惑をかけてしまうって、だい…
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