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家にいる鳥と猫のぬいぐるみが動いて喋るだけの話。  作者: やまだのぼる@アルマーク4巻9/25発売!
第一部

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今日は干されている。

「あー」

 窓際から、とりの声が聞こえてくる。

「なかみが寄っちゃうー」

 私の部屋は、日当たりが良い。

 それはちょっとだけ自慢だ。

 多少駅から遠くても、日当たりのいい部屋という条件でいろいろと探したのだ。夏の暑い日はちょっとそれを後悔することもあるけれど、やっぱりこうして洗濯物を干すときは、日当たり最高、この部屋にしてよかった、と思う。

「あー」

 とりの声がまたした。

「あんこがでちゃうー」

 うるさいなあ。

 私はピンチハンガーにさかさまに吊られているとりに声をかける。

「だいぶ乾いてきたでしょー?」

「うん。からだの中で小さな生き物たちの断末魔の声がするよー」

「それはなにより」

 ふかふかのからだは、ダニなどにとっても格好の住処になる。今日はとりのお風呂(洗濯)の日だ。

 とりはこれが嫌いで、特に干されている間はずっと何事か喋っている。

「あー。あたまに血が上る―」

 いや、君の身体に血は流れていない。綿が寄っちゃうという意見ならまだわかる。

 ただ単に暇なのかもしれない。

 隣で、これもさかさに干されたねこは、ぶらんぶらんと自分のからだを振って遊んでいる。

「ねこくん、カーテンレール壊れちゃうから、ほどほどにね」

「はーい」

 ねこが返事する。引っかける場所に乏しい我が家では、ピンチハンガーをカーテンレールに引っかけているのだ。

 日が落ちて、すっかり乾いた二人は、ピンチハンガーから降ろされるとさっそくお互いの身体の見せ合いっこを始める。

「うわ、とりさん真っ白! 目に刺さる!」

「ねこくんこそ白いよ! 眩しい!」

 全身が白いとりはもちろんのこと、三毛柄のねこも白地が大部分なので、洗濯が終わった後はいつもこうして互いの白を称え合っている。

「よかったねー」

 そう言いながら私がコーヒー片手に腰を下ろすと、二人はきゃああ、と悲鳴を上げながら私から離れていく。

「黒! 危ない!」

「コーヒーこっちに飛ばさないでよね、せっかくきれいになったんだから!」

「はいはい」

 その辺の広告を盾代わりにして文句を言う二人を見ながら、私はコーヒーをすすった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] お互いの白を称え合うなんて、なんて素敵! 相手を褒め合ったりするのって大事なことですよね♡ やっぱり幸せな空間だなぁ。 [気になる点] >ピンチハンガーをカーテンレールに引っかけている …
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