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ロストテクノロジーは誰のためにあるの?  作者: 維岡 真
第1部 赤い窓に宿りし君ーdisplay you on the red windowー
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Run & Chase


 相田の指示でいくつかのグループに分散して脱出を試みることになった。

 戦闘向きでない者たちは羽柴のグループで、ほかのグループにも最低二人は教官がつくことになった。

「いいか、もしもの場合は俺たちが盾になるから見捨てて逃げろ」

 植島のグループには相田がいた。同期の仲間としては亀山に磯松と戦闘向けの要員で固まっていた。

「……」

 普段であれば「俺も戦うぜ」と意気揚々と語る磯松でさえも終始無言である。廊下をかけながら行くとT字路に行き着いた。どっちに行くか考えあぐねていると、相田が「どけ」と言って機関銃を取り出し壁に向かって放射した。壁に穴が無数に開くとそこから彼の霊気力によって扉のように壁が切り取られその壁をなぎ倒して進んだ。

「こっちだ」

「そんなのありかよ」

 植島は思わず呟いた。

 しばらく行くとまたT字路に出くわした。そしてそのT字路の角から倒れている人の手が確認できた。

「あれは……!?」

 相田が急いで駆け寄ると見覚えのある眼鏡をかけた男、菅野だった。

「菅野!?」

 到着した植島らも声をかける。

「かっ、くはっ」

 声を出すのもやっとなくらい菅野は流血していた。「大丈夫か」

 相田が声をかけるも菅野は血を吐いて苦し悶えていた。

「う、後ろ」

 やっと菅野が振り絞った声を出した瞬間だった。

「がっ」

 相田が何者かに吹き飛ばされた。

「何だ」

 その何者かは見えないスピードで移動しており即座に逃亡の二文字が頭をかすめる。

「逃げっ……」

 植島がそう言おうとした瞬間その場にいたもう一人の同期、冷泉れいせんの胴が真っ二つに割れた。

「うおー」

 事態を一瞬で把握した磯松がゴリラのそれのように太く毛深くなった右手で空間を殴ると遠くでものすごい音を立てて壁が崩れ落ちた。

「逃げるぞ」

 植島、磯松、亀山の三人は元いた通路を引き返し始めた。しかし先ほど磯松が吹っ飛ばした何者かが再び追い始めてきているのを感じぜざるを得なかった。

「逃げろ!」

 相田の声が後ろから聞こえた。振り向きたい気持ちを抑え三人は駆けて行く。


「こっちだ!」

 外に出ると羽柴が先導して同期の霊気力者を車で次々と逃していた。

「羽柴さんは?」

 車に乗り込んだ磯松が訊ねる。

「俺はここに残る」

 そう言って植島たちを乗せた車が発進して行った。


「なんだったんださっきのは……」

 ふと磯松が言葉を漏らした。

「霊気力者だろう。欧米の」

 植島が答える。

「あひゃあひゃひゃひゃひゃ」

 亀山は狂ったように笑っていた。

「もう無理だろうひょ」

 慣れたものでいつも通りの亀山の様子に植島たちは逆に安心した。

 吉川に軽部に菅野に冷泉。

 次々と仲間がやられ心中はとても穏やかといい難かった。車の中で流れる音楽も耳に入り込む雑音でしかない。それほどまでに植島たちの気持ちは滅入っていた。

 ようやく少し休めるか。

 そう思いながら車が博多駅前の道路を走り抜けようとした時、信じがたい光景が目に入った。

 車が3台倒れており、それぞれから硝煙と中で倒れている人がいるのを確認できた。

「なんだよ」

 そう呟いた磯松の声は爆音にかき消され車が吹き飛ばされたことを植島は感じた。

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