エキシビジョンマッチ
ボゴールでの一夜が明け翌日僕たちは次の街へ向かうことにした。
「バンドン。ここから東南東100キロ強離れたところにある火山や茶畑が有名な都市だ」
亮介が説明する。
「西ジャワ州の州都だが熱帯でありながら避暑地でもある。まぁ日本で言うところの箱根だな」
「箱根」が何かわからないがまぁ観光地であることは理解できた。
「おしゃれな場所はあるの?」
エリーが純粋な目で訴る。
「学園都市としても有名だからな。ショッピングモールも多いからいくらでもあると思うぜ」
亮介の言葉にエリーはヒャッホウと飛び跳ねる。
僕は昨日の亮介の言葉を思い返していた。
『なにか見えざる手を感じるんだよな』
いつも変なことを言い出す亮介だが、それにしても変わった様子であった。
基本ふざけてばかりだが、時々真面目な雰囲気を出す。
そういう時の亮介はいつもに比べて年相応となる。
「なんだフォン。お前また鳥が見えたのか?」
亮介が言うとその後ろでエリーが吹き出しそうに笑う。
「‥‥‥」
なんか僕だけ真面目に考えるのがアホくさくなってきたので思考放棄することにした。
電車だと、一旦ジャカルタに戻らないといけないため僕たちはチャーター便を借りてバンドンに向かうことにした。
車内ではいかにもインドネシアを感じるような東洋舞踊を連想する曲が流れている。
「ーーーーーーー」
運転手は僕たちそっちのけで携帯で知人に連絡しているようだった。
「ふぁーねみぃ」
亮介はそう言って後部座席で思い切り横になって寝始めた。
エリーは楽しそうに窓の外を眺めている。
僕もそれに倣い窓の外を眺める。
ところどころ街を通り過ぎていき進んでいく。
そんな景色をぼんやりと眺めていると僕も眠たくなってきたので目を瞑ろうとしたその時、
またあの鳥がいた。
一瞬見間違いと思ったが、特徴的なフォルムと色合い、その挑発的というか僕を品定めするように見てくる姿は紛れもないそれだった。
すぐに通り過ぎていきそれは小さくなっていった。
二人に伝えてもどうせ馬鹿にされるだけだから僕は黙っていた。
あの鳥を見てから1時間ほどしてバンドンの中心地に到着する。
「あーよく寝た」
支払いを済ませて車から降りた亮介は大きく伸びをする。
「本当自分の家みたいに寝るわね」
エリーが呆れたように言う。
バンドンは僕が思ったよりも栄えていた。
ジャカルタにも引けを取らないほどのこれぞインドネシアと言わせんばかりの交通量にデパートやビルも多く並んでいた。
僕たちは本日泊まる宿に荷物を置いて近くの個人経営の料理屋で昼食を取ることにした。
「さてとバンドンには2日宿泊するから今日の午後は市街地を探索する」
亮介はサテを齧りながら話す。
「明日はどうするの?」
エリーが尋ねる。
「火山や茶畑が有名だって言ったろ? チャーター便かりて郊外に出かける」
想定外のアクシデントの中でもめいいっぱいに旅を楽しもうとする亮介には舌を巻くところであった。




