Luna into the lake
ジャカルタはコタ駅からKRLコミューターラインにてボゴールに僕たちは向かっていた。
「うわーキレー」
エリーは今にも飛び出さんとするくらい車窓から自然豊かな景色を眺めていた。
「ったく」
一方亮介は舌打ちをしながらどこか機嫌悪そうにしている。
その原因はウィンガーにあった。
彼は結局あの後すぐに「私はこれで。それではまたどこかで必ず会いましょう」と余裕そうな笑みを浮かべて颯爽と去っていった。
「二度と会うか」
と、亮介はガキのように舌を出して悪態をついていた。
ボゴールが近づくにつれてジャカルタ特有の人混みは消えていき田舎街の長閑な雰囲気を醸し始めたいた。
電車から降りてすぐに僕は背伸びをする。
1時間程度であったがずっと座りっぱなしだったため体がこわばっていた。
「日本の電車じゃねーか」
と亮介は降りた時にツッコンでいたが日本に行ったことがない僕はインドネシアの電車とばかり思っていた。
「おーい」
駅から出ると亮介はすぐにアンコット乗りの兄ちゃん運転手に片っ端から話し始める。
「あっあれ見て」
と、エリーは綿菓子のようなカラフル目掛けて一直線にかけていった。
「‥‥‥」
そんな彼、彼女たちについていけず僕は心の中でため息をついた。
駅から亮介が拾ったアンコットに乗って僕たちはボゴール植物園に来ていた。
ボゴール植物園はアジアでも有数な巨大植物園であり園内は自転車や電動キックボード、カートなどでも移動することができた。
「やっふーい」
と、どこで仕入れてきたのか亮介はセグウェイで駆けていく。
「ふー」
エリーはバイクに乗って遠くへと走り去っていった。
再び取り残された僕は、まぁ携帯があるからそれぞれ迷子にはなるまいと冷静に園内をゆっくりと回ることにした。
それにしても広大だ。僕は歩きながらここが植物園であることを忘れそうになるくらい街を歩いているような感覚に見舞われた。
園内には舗装された道路があって川や橋なども所々に存在する。
インドネシアの地方にはこういう街並みがあっても決しておかしくないような気がしていた。
電車の疲労もあってしばらく歩いた僕は橋から川を眺めたいた。
橋に肘を当て手で顔を支えながらぼーっと川を見ていた。
一匹の黒い嘴に白い羽毛を携えた鳥が川に口を突っ込んではブルブルと振るわせ天を仰ぎ何か言おうとしている風景を僕は心穏やかに見ていた。
一見何も変哲ない長閑な風景。
しかし僕はしばらくすると異変に気づいた。
「あれ?」
なんだかおかしい。そう思ったのは近づいてくる鳥が僕の目にはどんどん大きくなっているような気がしたからだった。
「これおかしくないか?」
その鳥はなんだか笑っているように見えた。
もちろん僕の見間違いだろうが僕を見てゆっくりと鳥の足しどりで近づいてくるそれはどんどんとその体も大きくなっているようであった。
「クエッ」
とその鳥が声をはじめて出したのを合図に僕は後退りそしてその場を去ろうとする。
しかしどういうわけか金縛りにあったみたいに僕の体は動かなかった。
「どうしたんだこれーー」
僕は自分の手を見つつ辺りを見回す。
タイミング悪くなのか人はいなかった。
「クエクエクエーー」
その鳥はついにその大きな羽で僕を威嚇するように仁王立ちする。
そしてバサバサと羽を動かし今にも飛び立たんとする様子であった。
「まずいーー」
僕は急いで立ち去ろうとするも足がどういうわけか動かない。
そして、そんな僕を他所目に鳥がついに飛び立ったその時であった。
ドガーン、とその音の方に否が応でも目がいった。
「痛ってー!」
その声の持ち主は亮介でセグウェイごと壁に激突していた。
さっきまでいなかったのにどんなスピードでセグウェイに乗っていたんだ。
と、僕が思った時には「あれ、フォンどうしたんだそんな恐ろしい顔して?」
と立ち上がった亮介が不思議そうに僕に言った。
「そうだ」
そこで僕はさっきまでのことを思い出し川の方に目をやったがあの鳥の姿は忽然と消えていた。
「あれ?」
僕は辺りをキョロキョロするがそこにはあの鳥はいない。
「さっきまで大きな鳥いなかった?」
僕は亮介に尋ねるも「知らね、セグウェイ世界記録に挑戦してたわ」と何しに来たんだコイツ状態であったためそれ以上追求することはしなかった。




