toasted
「基本的にジャワ島を東に抜けるとなったらここジャカルタから行く候補は主に2つ」
そう言って亮介は今日日どこで手に入れたのか地図を取り出して僕たちに見せる。
「南のボゴールからバンドンに向かうかブカシ方面からバンドンに向かうか。もちろんバンドンを通る必要は必ずしもないがそこそこ大きな都市なんで通っておきたい」
亮介はトントンとバンドンの位置を叩きながら言う。
「まぁ普通は直通の電車も通っているからブカシ方面からバンドンに行くのが定石なんだろうけど」
そういう亮介はどこか歯切りが悪そうに呟く。
「けど、ボゴールから向かう。だろ?」
そう言ったのは僕でも亮介でもエリーでもなく違う男だった。
「お前は!?」
声の持ち主はホーチミンで出会ったフリーのジャーナリストウィンガーであった。
「なんでてめーがいるんだよ」
亮介は軽く睨みつける。
「誰こいつ?」
エリーも急に親しげに話しかけてきた男に怪訝そうな顔をする。
「いやね、相変わらずあなたたちに興味があってね」
ウィンガーは肩をすかめながら言う。
「まさかベトナムの少女も一緒に連れて旅をするとは。いやはや話題に尽きない男です」
と、ウィンガーは日本風な会釈をする。
「勝手についてきたんだよ」と亮介は呟き、
「で、なんで俺たちがボゴールから行くって決めつけてんだよ」
と、主導権を取られることを気に食わない亮介が言う。
「いやね。あなたの顔に書いてありますよ」
と、ウィンガーは言う。
「本当ならファーストクラスの鉄道の旅にひとっぱしにバンドンに楽々向かうお金の余裕もある。でも、あなたはそんな簡単な旅はお望みではないはず」
ウィンガーは笑みを浮かべ挑発をかけてくる。
「ったく」
そういう亮介は気に食わない様子でありつつも的を外れていないウィンガーのセリフを否定するわけでもなかった。
「ボホールには大きな植物園もあり、カフェなども充実しています」
後者はどちらかというとエリーに向けて言ったのであろうが、こちらもエリーに対して少なからず響いているようだった。
「テメーはどこまでつけてくるんだよ」
亮介は最後にセリフを吐きながら悪態をつく。
「いやね、私は自由気ままにあなたたちを追わせていただくだけなのでお気になさらず」
最後まで余裕そうなウィンガーに僕たちは心の中でため息をつくしかなかった。




