厳しさだけを武器にしろ
ベンタイン駅で高垣とベトナム政府の重鎮、その他プロジェクトに関わった人物が来ていた。
「いやはや、こうしてこの日を迎えることができて嬉しいですね」
米越合弁の不動産会社CEO・Tren Yungdもかけつけていた。
「正式な開通式は明日になりますが当日は報道なども詰め寄ってオフィシャルにいきませんといけないですからな。今日はこうして身内だけでカジュアルに前祝いできて最高ですな」
明日の開通式を控えた駅の構内でパーティーは開催されていた。
「1号線、2号線、3号線と続いてこの4号線。想定より時間は多くかかってしまいましたがやむを得ませんね。計画通りに進めたいものですがどうしても世の潮流や人の命も関わってくる事柄ですからな。修正も調整もよくあることです」
「ところで高垣さん」
Tren氏が高垣に質問を投げかける。
「あのエリーとかいう少女は良かったのでしょうか? どうやらこの工事の一環で家庭がめちゃくちゃになったと聞きますし」
Trenの問いかけに高垣は首を横に振った。
「本当に遺憾ですよ。やむを得ないことにしろ彼女の生活を奪ってしまったのは我々です。その責任はきちんと鑑みてそれなりに対応しようと私は思っております」
高垣の言葉にTrenは頷く。
「ええ、その時はもちろん私の会社も協力を惜しみません。ホーチミンの一等地をも明け渡して彼女に豪華な一室を差し上げましょうぞ」
「ありがたい限りでございます」
「へー、じゃあ俺にもその部屋頂戴よ」
二人が団欒しているところへつかつかと歩いてくる青年がいる。
「誰だね君は?」
Trenが青年に向かって怪訝そうな顔をして尋ねる。
「俺かい? そうさなぁ俺は……」
そこで青年はかけていたサングラスを取り外し二人に向かってこう話した。
「しがないそこらじゅうのバックパッカーです」
青年の笑みには自身の二文字があった。
高垣とTrenは困惑しながら亮介を見ていた。亮介はそんな二人にはお構い無しといった様子で、
「あっどうぞどうぞおきになさらず」
と、勧めたかと思うとその場に座り込み胡座をかいて自身のグラスにワインを注ぎ始めた。
「いやーこれがたまらんのですわ」
などとほざく亮介に、
「誰か彼をおさえなさい」
と周りにいたSPがぞろぞろと亮介を取り囲み羽交い締めにする。
「イテッ、何すんだ」
亮介は必死に足掻くも分厚い胸板を持つ男たちがそれを許さない。
「連れ去りなさい」
高垣の指示で亮介は運ばれようとする。
「霊気力」
亮介は呟く。
「それのありかを知ってんだけどねぇ俺は神宮司亮介は」
亮介がニヤリと笑うと高垣とTren氏はガバリと振り向いた。
「あれってか日本語わかるんだ」
亮介がニヤリとするとTrenはしまったというような表情を浮かべる。
「癒着癒着癒着ねぇ。それもいいけどもっといいもの教えたげよーか兄さんが」
そういうと亮介は指をパチンと鳴らした。
すると音楽が鳴り始めて何時ぞやの街で見かけたお姉さん二人組がダンスをしながら入ってきた。




