出撃の間合い
「うーん」
画廊にてエリーは目を覚ました。
「ここはどこ」
エリーは僕たちを見ながら尋ねる。
「ここはとある画廊だよ」
あの後、近くの画廊に彼女を運んで休憩させてもらうことにした。
「そう」
「で、なんでてめーはあんなところにいたんだ?」
亮介が訊ねる。
「なんでって」
「記憶がねーのか」
「あるわ少しだけ」
「じゃあ、なんだあれは一体」
「わからない。いつの間にか気づいたらあれになるの。飲み込まれる感じで」
エリーはそう話した。
あの黒い霧の話だ。
「霊気力か」
「霊気力?」
聞き慣れない言葉だ。
「ありとあらゆる万物に備わっている特異なエネルギーだ」
お子ちゃまは知らなくていいと亮介は言った。
「あんた何か知ってんの?」
エリーが食い下がるように亮介にしがみつく。
「うるせー」
亮介はその手を払って、
「地縛霊って知ってるか? おめーはあれの生きているバージョンってことだ。ドーユーアンダースタンド?」
「全くわからない」
「じゃあ今この話は無しだ。話したところで理解できん」
亮介はそう言って背を翻す。
「まぁ、話は早い。おめーのせいで俺たちやこの奇妙な現象は起きているってこった。解除してくれると嬉しいねぇ」
「解除って……」
「どうすればいいかはお前が一番よくわかってんだろ?」
と、亮介はエリーを睨んで画廊から去っていく。
「ちょっと亮介!」
僕は走って亮介に追いついた。
「ちょっと言葉が少ないよ。どういうこと?」
「さっき話したことで全てだよ」
「彼女が生きている地縛霊ってこと?」
僕は亮介に尋ねる。
「そういうこった。あいつの憎しみ、怨念、憎悪そのものが霊気力となってああして具現化している」
亮介はあけすけなく言う。
「だからその霊気力ってなんだよ」
僕は亮介に質問する。
「それはググってみな」
と亮介はそれっきりだんまりだった。
「それはともかくだ」
亮介は何はともかくいった様子で歩き始める。
「いくぞ」
スタスタと歩く亮介に僕はイラつきながら尋ねる。
「いくってどこへ?」
「決まってるだろ」
亮介は言う。
「ホーチミン地下鉄4号線の開設記念式典が行われる予定のベンタイン駅だよ」




